The Japanese Association for the Study of Popular Music

2013年第2回関西地区例会

関西地区では、下記の例会を開催いたします。

 

研究会「音楽フェスのジレンマーー慈善事業かビジネスか? ローカルかグローバルか?」

 

登壇者:沖島了太氏(舞音楽祭主催者・財団法人O-Plus代表理事)
山本佳奈子氏(アジアのインディーカルチャーサイトOffshore主宰)
永井純一(神戸山手大学講師)
司会:長﨑励朗(京都文教大学講師)
日時:2013年9月28日(土)15:00~18:00
会場:関西学院大学 西宮上ケ原キャンパス 第一教授研究館本館1階 会議室1
キャンパスマップ:http://www.kwansei.ac.jp/pr/pr_001086.html(18番の建物が第一教授研究館本館です)
キャンパスまでのアクセス:http://www.kwansei.ac.jp/pr/pr_000374.html

 

概要:

音楽フェスには様々な評価軸が存在する。それはエコ、国際交流といった理念の問題から単純な規模やアーティストの選定基準にいたるまで多岐にわたる。だからこそ、研究対象として豊かな土壌を提供してくれるが、その反面、全体像を捉えた研究が難しいのも事実である。

そこで、本研究会ではフェスが抱える2つのジレンマに焦点をあてた議論をおこなうことによって、フェスを考えるためのある程度定まった観点を見いだしたい。ここで扱うジレンマとは、「慈善事業かビジネスか?」「ローカルかグローバルか?」の2点である。これらは先に述べた様々な評価軸と密接に関連しており、フェスに関する問題系の中心に位置していると考えられるからだ。

これらについて本研究会では、大阪における舞音楽祭(旧渚音楽祭)の主催者である沖島了太氏と、アジアのインディーカルチャー紹介サイトoffshoreの管理人である山本佳奈子氏を招き、フロアも交えた討議をおこなう。

舞音楽祭はレイブフェスとしては中規模のもの(6000~9000人規模)ではあるが、「ローカル・アーティストのショーケース」という形式を守り続けており、先に挙げた2つのジレンマを考えるにあたっては格好の素材である。沖島氏から舞音楽祭(大阪)の主催者になるまでの道のり、およびフェス企画のプロセスなどについて語っていただくことで、主催者側の視点を提供していただく。

一方、山本佳奈子氏はアジアのアンダーグランドな音楽やアート事情に精通しており、サイト運営だけでなく、それらの情報を発信するイベントも手がけている。国外のシーンにも目を向けることで多角的かつ深みのある議論に発展することが予想される。

最後に永井純一氏は主にフェスのオーディエンスに焦点をあてた研究を続けている。以上のようにさまざまな視点からフェスが抱えるジレンマについて議論することで、フェス研究に新たな地平を見いだすことを目的とする。

 

問い合わせ先:鈴木慎一郎(研究活動担当理事)ssdeya_at_kwansei.ac.jp(_at_をアットマークに変えてご送信ください)

2013年第2回関東地区例会

日本ポピュラー音楽学会 第2回関東地区例会

 

日時:7月13日(土)14時00分~18時00分
会場:武蔵大学 教授研究棟1階 01-B会議室
アクセス: 西武池袋線「江古田駅」南口5分/都営大江戸線「新江古田駅」A2出口7分:http://p.tl/f9TB
キャンパスマップ:http://p.tl/cWhb(地図上Mの右隣10階建て建物の1階)

 

第1部 修士論文構想発表/報告会

 

<修士論文構想発表> 「演歌」および「懐メロ」は如何に聴取されているか?―音楽聴取経験におけるノスタルジーについての考案
発表者:ベニー・トン (シンガポール国立大学大学院 人文社会科学部 日本研究学科修士課程)

 

要旨:演歌はしばしば、「古き良き日本」の象徴とされる。しかし、一種の大衆音楽でもありながら、聴衆がいかにしてそうしたイメージを受容し、或いは意味づけるかということについての研究は乏しい。演歌の聴取により生ずる郷愁は如何なるものか。如何に生み出されるか。本論では、演歌を含む多様なジャンルの愛好家への聞き取り調査を素材に、ノスタルジーに関する先行研究を踏まえ、音楽聴衆経験によって生じるノスタルジーの特質とその作用の解明をめざす。

 

<修士論文報告> ポピュラー音楽の歌詞における日英言語の考察
発表者:赤木大介 (大東文化大学大学院 博士後期課程)

 

要旨:日本においてポピュラー音楽と呼ばれる大衆音楽が広まっていった1920年代頃の作品や訳詞家の漣健児による作品をはじめ、その後も数多く生み出されてきた日本語訳詞の洋楽カバー楽曲や、J-pop作品が英語歌詞でカバーされる近年の流行を通して、その歴史的流れや文化的背景を例証する。また日英間の歌詞翻訳に関してPeter Low(2005)は、重要となる項目をSingability, Sense, Naturalness, Rhythm, Rhymeの五つにまとめており、これらの基準を用いて同作品の歌詞を比較し、旋律上で言語を扱う際の特徴についても考察する。

 

第2部 個人報告

 

「ユー・ガッタ・ムーヴ」──フォークがロックへ踏み出したとき
発表者:佐藤良明

 

要旨:Rolling Stones の “You Gotta Move” (71) は、デルタより「素朴」とされたミシシッピー丘陵地の Fred McDowell のカバーである。Alan Lomax が1959年に「発見」した McDowell は、「フォークの浪漫主義」と「ロックの快楽主義」が交叉する興味深い存在。この発表では、一曲のゴスペル曲のルーツを商業音楽の流れの中に探りつつ、60年代初頭の Dylan や Jagger の動きを追って、ロック革命とは何だったのか、その輪郭を描くことを試みる。

 

みなさまのご参加をお待ちしております。

 

問い合わせ先:

南田勝也(研究活動担当理事)
minamida_at_cc.musashi.ac.jp(_at_をアットマークに変えてご送信ください)
溝尻真也(関東例会担当委員)
toncotsu_at_hotmail.com(_at_をアットマークに変えてご送信ください)

2013年第1回関東地区例会

関東地区で、卒業論文・修士論文発表会を下記の通り開催します。

日時: 3月23日(土)14時00分~17時00分
会場: 武蔵大学 江古田キャンパス教授研究棟01-B室(東京都練馬区豊玉上1-26-1)
アクセス:西武池袋線「江古田駅」南口5分/都営大江戸線「新江古田駅」A2出口7分:
キャンパスマップ:(地図上Mの右隣10階建て建物の1階)

発表:イングランドの第二次フォークリバイバルにおけるロイドの貢献
発表者:廣瀬 絵美(日本女子大学大学院文学部英文学専攻 博士課程前期2年)
要旨:
アルバート・ランカスター・ロイド(1908-1982)は、民俗学者、ライター、音楽プロデューサー、フォークソングのパフォーマーであり、1950年代から1960年代のイングランドで起こったフォークリバイバル運動の主導者である。本報告会では、ロイドが改作したバラッドやフォークソングに関する研究書、ライナーノーツをもとに、ロイドの業績を見直していく。そして、ロイドがフォークソングを通して見出そうとしたオルタティブな世界観やコミュニティといったものを明らかにしていく。

発表:フリーミュージック/フリーコンテンツ ――インターネットレーベルと初音ミク現象に見るコンテンツ制作者の未来
発表者:永野ひかり(武蔵野美術大学造形学部)
要旨:
「フリーミュージック/フリーコンテンツ」とは、インターネットに溢れる音楽を中心としたコンテンツと、それに関わるコンテンツ制作者、そして彼らが形成するコミュニティを表す言葉です。パーソナル・コンピューターの低価格化やインターネットの普及は、個人によるコンテンツの制作と発表の敷居を下げました。そのことがもたらしたのは「コンテンツがインターネットで発表され、そのコンテンツを介してコミュニケーションが行われ、コミュニケーションによって新たなコンテンツが生まれる」という基盤を形成したことです。
本論では、「フリーミュージック/フリーコンテンツ」の流れの中でも、特にインターネットレーベルと、初音ミク現象を扱い、「フリーミュージック/フリーコンテンツ」をいかにして存続させていくか、ということを考察します。そして、近しい文脈の文化を繋げて巨大な内輪を形成することと、ふたつの事象を同時に俯瞰することで浮かび上がる固有の価値を提示することを、問題解決のための打開策として提案しています。

みなさまのご参加をお待ちしております。

問い合わせ先:
南田勝也(研究活動担当理事)
minamida_at_cc.musashi.ac.jp(_at_をアットマークに変えてご送信ください)

2013年第1回関西地区例会

関西地区で、修士論文・博士論文発表会を下記の通り開催します。

日時:2月11日(祝)13時30分~17時30分
会場:関西学院大学 大阪梅田キャンパス 10階1002号室
(大阪市北区茶屋町19-19アプローズタワー10階 受付TEL:06-6485-5611)
アクセス: 阪急「梅田駅」茶屋町口改札口から徒歩5分/JR「大阪駅」御堂筋出口から徒歩10分/地下鉄御堂筋線「梅田駅」から徒歩7分/「中津駅」から徒歩4分
地図: http://www.kwansei.ac.jp/kg_hub/access/index.html

発表1: クラシック音楽のコンサートにおけるマナーの意義——聴衆(オーディエンス)の姿勢から探る
発表者: 堤万里子(京都精華大学大学院人文学研究科修士課程)
要旨:
近年、コンサート需要は増加傾向にある。その中、クラシックコンサートは一定の来場者を確保し続けてはいるが、公演数の増加や動員数の増加に繋がっていない。むしろ、一般的には敬遠されている印象をうける。その一つの理由として、コンサートにおける抑制的なマナーが関係しているのではないかと考えられる。オーディエンスの姿勢を基にクラシックコンサートのマナーの意義を明らかにする。

発表2: 私事化するロック――現代日本における若者の音楽受容
発表者: 島村譲(関西大学大学院社会学研究科マス・コミュニケーション学専攻修士課程)
要旨:
「ロックは死んだ」とされて久しい現代の日本においても、〈ロック=反抗の音楽〉というイメージは人々の間に残存している。では現代の日本の若者、とりわけロックファンはロックをどのように受容しているのだろうか。そこに〈反抗〉などの精神性やイデオロギーは存在するのだろうか。ロックの〈反抗〉や日本の若者の音楽受容についての先行研究を踏まえ、ロックファンへのインタビューを通じて、彼らが音楽受容に何を求めているのかを探っていく。

発表3: 社会的行為としての指揮――音楽演奏における時空間の編成から
発表者: 平田誠一郎(関西学院大学大学院社会学研究科研究員)
要旨:
クラシック音楽の演奏において、指揮者は何をしているのか。本発表ではこの問いに対して、アルフレッド・シュッツの「音楽の共同性」論文に基づき、それがたんなる音楽的・技術的な指導を超えた、奏者・聴衆も含めた演奏空間にいる人びとの「内的時間のコーディネート」であると答えたい。また指揮者は、そのような人びとが共有する内的時間を可視化・具現化することによってクラシック音楽の演奏空間の形成に重要な役割を果たしている。このような指揮者のあり方について、現代文化におけるクラシック音楽の受け止められ方の変容も踏まえつつ議論を行う。

問い合わせ先:
南田勝也(研究活動担当理事)
minamida_at_cc.musashi.ac.jp(_at_をアットマークに変えてご送信ください)

2012年第3回関東地区例会

関東地区例会では、下記の例会を開催いたします。

井上貴子編著『日本でロックが熱かったころ』書評会

日時:2012年12月22日(土)14:00-17:45頃予定
会場:武蔵大学 江古田キャンパス 1号館1203教室
地図:http://www.musashi.ac.jp/modules/annai_kouhou/index.php?content_id=9

登壇:
・今井晋(東京大学大学院)「メディアの影響と表象:日本のパンク受容の再検討(仮)」
・高橋聡太(東京芸術大学大学院)「日本でロックが熱く語られていたころ」
・難波弘之(ミュージシャン/東京音楽大学)「ロックとアカデミズムの間には、深くて暗い谷があるの?」
・井上貴子(大東文化大学)「刺激的な異文化から平凡な日常へ」
司会:南田勝也(武蔵大学)

この2年ほど当学会誌上で論争が繰り広げられている井上貴子編著『日本でロックが熱かったころ』(青弓社)
の書評と、それに対する「書評リプライ」に関して、本例会では直接議論する場を設けます。
編著者の中から書評に応答された井上・難波両氏をお迎えし、評者の今井氏、さらに、当学会最若手の世代にあたる
高橋氏を加えた計4名にご登壇いただきます。奮ってご参加ください。

問い合わせ先:安田昌弘(研究活動担当理事)yasuda_at_kyoto-seika.ac.jp (_at_をアットマークに変えてご送信ください)

2012年第1回中部地区例会

2012年第1回中部地区例会を下記のとおり開催します。
日程:2012年11月18日(日)13:30~17:00
会場:愛知県立大学のサテライトキャンパス
愛知県産業労働センター  15階
愛知県名古屋市中村区名駅 4丁目4-38
(名古屋駅から徒歩2分)
http://www.winc-aichi.jp/access/

プログラム:
1)グローカル化するアラビアの唄
エドガー・W・ポープ
この発表では昭和初期の日本で大ヒットし、オーストラリアでも人気があったアメリカのジャズソング、「アラビアの唄」(”Sing Me A Song of Araby”)についての研究結果を提示しながら、その国際的な旅をエキゾチズムと音楽産業のグローバル化のなかのグローカル化の一例として取り上げる。19世紀にヨーロッパで発展した中東に対するエキゾチズムは文化製品の国際流通によってアメリカやオーストラリア、そして日本にも普及した。中東エキゾチズムの流れを受け継いだアメリカの音楽産業の製品として1927年に出版された「アラビアの唄」は楽譜、ピアノロール、そしてレコードの媒体で輸出され、日本とオーストラリアでは地元のミュージシャンや企業によってローカル化された。一方オーストラリア発売のためにはアメリカで録音され、日本発売のためにはドイツで録音されたことから、グローバルな音楽産業のいわゆる「中心」のミュージシャンも「周辺」のローカル化に関わっていたことがわかる。この一曲の歴史にみられるさまざまなグローバル化とローカル化を考察する。

2) 巷で大人気であった三拍子曲〈籠の鳥〉と、時を超えて愛唱される三拍子曲〈故郷〉の歪み
三井 徹
1924年(大正13年)に大人気となった〈籠の鳥〉は三拍子曲であるのに、当時の録音では、一ヶ所が四拍子になってしまう。
作曲者である鳥取春陽の歌唱は、例外的に三拍子を一貫させているものの、同年に上演された演劇「籠の鳥」の主役、歌川八重子をはじめとした録音では、全八小節の旋律の第四小節が四拍子になっている。歌詞の一番で示せば、「逢いたさ/見たさに/こはさを/わすれ」の「わすれ」の後が一拍ではなく二拍伸びる。この歌を全国で口ずさんだ老若男女も同様であったに違いない。そして実は、これは当時に限ったことではなく、特に無伴奏の場合、いまにも持続する。
三拍子曲としては欠陥と言えるその第四小節と同じことが、名曲として親しまれてきている1913年(大正2年)高野辰之作の〈故郷〉(ふるさと)にも共通している。伴奏なしの気ままな歌唱や独奏では、全十六小節の後半部の「夢は/今も/めぐ/りて」の「りて」の後に二拍が続く。
それに基づく展開は、三拍子に不馴れというよりも日本人のリズムが基本的に二拍子に基づいているという程度にしか示せず、発表は指摘の域をさして出ない。
それでも指摘には値するかなという判断です。

懇親会:
三井先生を囲んでの懇親会を名古屋駅周辺で行います。参加費用は4000円前後を予定しています(食事と飲み物を含む)。参加希望の方は11月10日までにポープにご連絡ください。

お問い合わせ:
pope@for.aichi-pu.ac.jp
エドガー・W・ポープ
(中部地区研究活動委員)

皆さまのご参加をお待ちしております。どうぞよろしくお願いいたします。

問い合わせ先:安田昌弘(研究活動担当理事)
yasuda_at_kyoto-seika.ac.jp (_at_をアットマークに変えてご送信ください)

2012年第4回関西地区例会

細川周平(編著)『民謡からみた世界音楽 うたの地脈を探る』の合評会を下記の通り開催します。

日時:10月13日(土曜)14時30分~17時30分
会場:関西学院大学 大阪梅田キャンパス 14階1404号室
(大阪市北区茶屋町19-19アプローズタワー14階 受付TEL:06-6485-5611)
アクセス:阪急「梅田駅」茶屋町口改札口から北へ徒歩5分。JR「大阪駅」御堂筋出口から徒歩10分。地下鉄御堂筋線「梅田駅」から徒歩7分。「中津駅」から徒歩4分。
地図:http://www.kwansei.ac.jp/kg_hub/access/index.html

2012年3月にミネルヴァ書房から『民謡からみた世界音楽 うたの地脈を探る』が刊行されました。JASPMからは、細川周平会員(国際日本文化研究センター)が編著者を務めている他、多数の会員が執筆しています。ポピュラー音楽研究にとって豊かな論点を含んだこの書をめぐり、合評会を催します。評者には、鈴木慎一郎(関西学院大学)・粟谷佳司(立命館大学)の両会員を予定しています。編著者の細川会員と、執筆者の輪島裕介(大阪大学)・長尾洋子(和光大学)の両会員も出席し、議論に加わる予定です。

なお、当日は会場で『民謡からみた世界音楽』が特別価格(定価6,000円→4,500円)で頒布されます(数に限りがあります)。

問い合わせ先:安田昌弘(研究活動担当理事)
yasuda_at_kyoto-seika.ac.jp (_at_をアットマークに変えてご送信ください)

2012年第3回関西地区例会

関西地区で、修士論文発表会を下記の通り開催します。

日時: 6月30日(土曜)17時~19時30分
会場: 関西学院大学 大阪梅田キャンパス 14階1404号室
(大阪市北区茶屋町19-19アプローズタワー14階 受付TEL: 06-6485-5611)
アクセス: 阪急「梅田駅」茶屋町口改札口から北へ徒歩5分。
JR「大阪駅」御堂筋出口から徒歩10分、地下鉄御堂筋線「梅田駅」から徒歩7分、「中津駅」から徒歩4分。
地図: http://www.kwansei.ac.jp/kg_hub/access/index.html

発表1: “Well, You Needn’t”――セロニアス・モンク、アミリ・バラカ、公民権運動におけるジャズのポリティクス
発表者: 山田優理(同志社大学大学院グローバルスタディーズ研究科博士後期課程)
要旨:
本研究は、ジャズ・ピアニストであるセロニアス・モンク(1917−1982)が20世紀を代表する黒人作家・音楽批評家であるアミリ・バラカ(リロイ・ ジョーンズ)によってどのように表象されたか、また、モンク自身は自らの人種及び音楽の社会運動における役割をどのように把握していたのかを比較、考察するものである。
 ブラック・アーツ運動の立役者であるアミリ・バラカが1960年代に取り入れた政治的急進主義の視点からジャズ批評を試みるという手法はそれまでリベラルな白人が多数を占めてきたジャズ批評界を震撼させたが、アヴァンギャルド・ジャズという同時代の音楽と政治的に結びついて一定の勢力を誇った。この時代にバラカが積極的に音楽批評を試みるようになった理由には彼の政治思想がニューヨークのダウンタウンを中心としたボヘミアニズムから黒人ナショナリズムへと移行しつつあったことが背景にある。黒人独自の政治意識および美的観点の構築を試みたバラカは、アヴァンギャルド・ジャズはビバップの後継者だと主張することで自らが率いる政治運動の正当性を証明しようとしたが、この言説においてモンクはジョン・コルトレーンと並び重要な位置を占めた。
 一方、一般的に政治には無関心であると認識されていたモンクだったが、彼の言動を詳細に分析してみると、そのような言説が必ずしも正しいわけではないことが証明される。むしろ、他の黒人演奏家同様、モンクが公民権団体の主催する慈善コンサートに参加したという事実は彼の社会運動に携わりたいという意識の顕れともみてとれる。であるがしかし、本研究では、演奏家達の慈善コンサートへの参加は、彼(女)らの政治意識の高さを裏付けるものでは無く、公民権運動のような社会運動の勢力の絶大さ、政治が芸術創造活動に与える影響の強さを示しているとする解釈を試みた。演奏家から社会勢力への視点の転換は、偉人列伝を中心に据えたジャズ史を肯定するか否かという問題を巡り方向性が見出せなかった近年のジャズ研究に新たな可能性を提示するものであると主張し、本研究のまとめとしている。

発表2: クルーナー唱法の生成――アメリカ合衆国における音楽・メディア・社会
発表者: 福永健一(関西大学大学院社会学研究科マス・コミュニケーション学専攻博士後期課程)
要旨:
本論は1920年代後半頃、アメリカ合衆国において生じた、ポピュラー音楽の歌唱法であるcrooning(クルーナー唱法)およびその歌手を指すcrooner(クルーナー)についての研究である。クルーナー唱法は、「電気マイクロフォンの登場によって可能となった、男性による、小声でささやくような歌唱法」というのが一般的な認識である。
本研究では、クルーナーがテクノロジーに依存した歌唱法である、というようなナラティブとは異なった議論を展開する。特に1929年に登場した、最初のクルーナー歌手であるとされる、Rudy Valleeに着目する。当時のアメリカ社会は、消費社会が立ち現れ女性が消費者として明確に想定されるなど、「女性」が発見された時代である。その一方でマス・メディア産業、特に音楽、映画、ラジオといった諸産業が重層的、多元的に編成されてゆく。そのような、アメリカ合衆国において生じていた地殻変動を歴史的に敷衍し、社会的コンテクストからクルーナー唱法が生成されてゆく様を論証することが本論の目的である。

問い合わせ先:安田昌弘(研究活動担当理事)
yasuda_at_kyoto-seika.ac.jp (_at_をアットマークに変えてご送信ください)

2012年第2回関西地区例会

関西地区で、研究例会を下記のとおり開催します。

日時: 6月9日(土曜)16時~19時
会場: 関西学院大学 大阪梅田キャンパス 10階1002号室
(大阪市北区茶屋町19-19アプローズタワー10階 受付TEL: 06-6485-5611)
アクセス: 阪急「梅田駅」茶屋町口改札口から北へ徒歩5分。
JR「大阪駅」御堂筋出口から徒歩10分、地下鉄御堂筋線「梅田駅」から徒歩7分、「中津駅」から徒歩4分。
地図: http://www.kwansei.ac.jp/kg_hub/access/index.html

発表1: 音と映像との「対位法(コントラプンクト)」再考――初期トーキー映画理論を軸に
発表者: 長門洋平(国際日本文化研究センター機関研究員/京都外国語大学非常勤講師)
要旨: 映画の音楽をめぐる理論的言説において、音と映像との対位法という概念は一般に「特定の映像に、あえてその意味内容とは対照的な印象を持つ音楽をかぶせることによって映像の意味を強調する、あるいは新たな意味を付与する手法」と理解されることが多い。しかしながらこの考え方は、本来の音楽理論としての「対位法」とはその概念構造が微妙にずれている。さらに、1920~30年代の「トーキー革命」期に大きく喧伝されることにより世界的に波及したこの用語は、必ずしも常に対照性(コントラスト)を含意していたわけではなかった。本発表では、主に以下の論点に注目しながらこの概念を再検討・整理する。①対照性、②映画を構成する各要素の自律性、③「垂直モンタージュ」あるいは「ポリフォニック・モンタージュ」、④異化効果、⑤映像のナラティヴ、音響のナラティヴ、⑥「効果」のベクトル、⑦フレーム外の音とその深度。

発表2: 「腹話術」としてのポピュラー音楽――クルーニング唱法を手がかりに
発表者: 秋吉康晴(神戸大学大学院人文学研究科博士後期課程)
要旨: 1920 年代末に登場した「クルーナー」、なかでもルディ・ヴァレーとビング・クロスビーは、20 世紀のポピュラー音楽史においてある特別な地位を与えられてきた。それはマイクロフォンを忠実な複製の媒体ではなく、ひとつの「楽器」と見なし、テクノロジーに根ざした歌唱のスタイルを確立したからであるとされる。それでは、「クルーニング唱法」とそれ以前のテクノロジーに依存しない歌唱スタイルは、受容経験においてどのように異なっていたのだろうか。本発表ではこの問題を声から聞きとられる歌手の身体性という観点から考えてみたい。そのために本発表では「声のきめ」(ロラン・バルト)を批判的に検討し、バルトの問題を乗り越えるための手がかりとして「腹話術」(ジェイソン・トインビー)という観点を導入して考察したいと思う。

研究会終了後には懇親会も予定しています。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

問い合わせ先:安田昌弘(研究活動担当理事)
yasuda_at_kyoto-seika.ac.jp (_at_をアットマークに変えてご送信ください)

2012年第2回関東地区例会

関東地区では、5月25日(金)に例会を開催します。

今回は海外から日本に滞在中のお二方にご登壇頂きます。奮ってご参加ください。

日程:2012年5月25日(金)18:30-20:00頃
会場:東京芸術大学 北千住キャンパス 音楽学部音楽環境創造科 第一講義室
地図:http://www.geidai.ac.jp/access/senju.html

登壇者:Noriko Manabe (Princeton University), Martin Roberts (Independent Scholar) 
司会:毛利嘉孝(東京芸術大学)

1) Noriko Manabe (Princeton University)
Title: Toward a Typology of Intertextuality in Protest Songs: Revolution Remixed in Antinuclear Songs of Post-Fukushima Japan
Abstract:
Despite Hiroshima and Nagasaki, Japan has pursued a program of expanding nuclear power, enabled by tight relationships among the electric power companies, central and local governments, and the media that go back to the beginning of the Cold War. Since Fukushima, public opposition to nuclear power has grown widespread in the face of the perceived lack of trustworthy, timely information on radiation from officials. Nonetheless, the mainstream media has carried little non-official information and ignored protests, while some antinuclear figures have suffered consequences. Under these circumstances, music—in sound demonstrations, performances, and cyberspace—has emerged as an important conduit for the voicing of antinuclear sentiments.
Protest songs, by their very nature, are highly intertextual; they refer to current issues either directly (e.g., through lyrics that quote officials) or obliquely through metaphors. In addition, they often refer to historical movements, thereby accessing the listener’s feelings about that movement and compounding the songs’ power through semantic snowballing (cf. Turino). Classifying types of intertextuality would be useful for analyzing how musicians choose to convey their messages, and how they are received.
Using Genette’s classification of transtextuality as a starting point (with references to Lacasse), I formulate a typology of intertextuality for protest songs. These types include hypertextual covers (with changed lyrics), remakes and reinterpretations, mash-ups, metaphors, and allegories; intertextual quotations; paratextual uses of promotional or concessionary materials; and architextual adaptations of style for strategic purposes. In order to analyze reception, I overlay Peircean models of how signs take on meaning and are interpreted. My analytical process considers signifying parameters (e.g., texts, music, performance, visuals), referred events, and dynamic responses.
I apply this process to analyze the music of the Japanese antinuclear movement post-Fukushima, overlaying findings from interviews with artists and protesters, to describe the methods by which musicians deliver their antinuclear messages. Through writing new lyrics to existing songs, quoting hip-hop classics by Gil Scott-Heron and Public Enemy, performing satirically as electric-power officials, adapting light-hearted matsuri (festival) styles, or using metaphors (e.g., Godzilla), musicians comment on nuclear policy and draw parallels between this movement and World War II, antiwar protests, and African-American struggles.

2) Martin Roberts (Independent Scholar)
Title: THE SMALLEST MUSIC IN THE WORLD: VIDEOGAME SUBCULTURES AND NOSTALGIA FOR THE FUTURE
Abstract:
This paper addresses the emergence over the past decade of a new kind of digital musical object which I call nanomusic. Variously known as 8bit, blip-hop, or chiptune music, these new musical objects originated through the hacking of the sound-cards of vintage console video games produced by companies such as Atari and Nintendo, and were aesthetically inspired by their soundtracks. In recent years, the rapid growth of mobile software development and social networking sites have intensified the production and exchange of such musics, which are today the focus of a thriving subcultural community in the U.S., Europe, and Japan. The paper will consider nanomusic in relation to three main areas: new media histories, including mp3 and other digital music formats, peer-to-peer networking, and mobile technologies; DIY culture, hacking, and subcultural resistance; and recent critiques of the “retromania” of postmodernist media culture. Attention will also be given to questions of aesthetics, notably hybridization with other forms of popular music, and performance at festivals and other live-action venues.

問い合わせ先:安田昌弘(研究活動担当理事)
yasuda_at_kyoto-seika.ac.jp (_at_をアットマークに変えてご送信ください)