シンポジウム「音楽ライブの公共性」
観覧無料(YouTube Live配信→ https://youtu.be/yHcZhRYwxGg)
パネリスト:
南出渉(神戸VARIT.代表)
大原智(一般社団法人GREENJAM代表理事)
高岡智子(龍谷大学社会学部准教授)
中條千晴(フランス国立東洋言語文化学院日本学部専任講師)
司会:
永井純一(関西国際大学現代社会学部准教授)
ライブエンターテインメントは21世紀に入って大きく成長した分野である。その中で音楽ライブの占める割合は大きく、観光立国や地域・産業活性化の観点からも注目度が高まりつつある。
しかし、周知の通り、2020年のコロナ禍以降は公演の中止や延期が相次ぎ、売り上げの9割が失われる事態となった。2021年10月の緊急事態宣言等の解除以降は人数制限などの規制が緩和されつつあるものの、社会的関心の高さにも関わらず、補償や支援が遅れ自助と共助を余儀なくされたことには課題が残る。
この停滞は、過去20年のライブシーンの盛り上がりを鑑みれば、意外に思える。一方で、社会における音楽ライブの増加傾向については十分な議論がなされてこなかったことも事実であろう。そうしたなかで、ライブシーンの内外の認識や意識には大きな違いが生まれ、その落差は放置され続けていたのではないだろうか。本学会でも、シンポジウムやワークショップ、個人報告を通じてしばしば「ライブ」を扱ってきたが、あくまでも内側に焦点を当てたものであった。
たとえば、コロナ禍のライブをめぐる議論は、しばしば「文化」(だから保護すべき)と「経済」(だから補償すべき)の2点に集約されよう。この議論自体は極めて重要であるが、敢えて言えば、こうした日本社会において「内輪の論理」と捉えられがちな考え(あるいは主張)はライブシーンの外側の人々にどれほど訴求力を持っているのだろうか。他のアジェンダや視座を設定することはできないだろうか。
以上のような問題意識のもと、本シンポジウムでは「社会にとってライブとは何か」という本質的な問いをたて、研究者と実践者のそれぞれの観点から議論をおこなう。
パネリストの南出氏は神戸市のライブハウスVARIT.を運営し、コロナ禍においては配信ライブイベント「ライブハウスジャッジメント in KOBE」の企画をはじめ、従来のライブハウスの枠を超えた活動を展開してきた。大原氏は主催する無料ローカルフェス「ITAMI GREENJAM」が2年連続で中止となるなか、音楽フェスではないイベントの開催を模索してきた。実践者の両氏には、こうしたコロナ禍での活動や現場の現状について報告いただく。これに対し、研究者サイドはヨーロッパの事情に明るい2名が、中條氏は日常生活と音楽、高岡氏は文化政策の観点から議論を発展させる。
本シンポジウムは問いに対して一つの答えを出すようなものではないかもしれないが、研究者コミュニティにとどまらない広がりを持つような、発展的な議論となるよう努めたい。