初音ミクライブにおけるオーディエンス──『初音ミク「マジカルミライ2013」』を事例に

会場:友愛館Y-004教室・14:00〜14:40

吉村汐七(大阪大学大学院文学研究科博士前期課程)


本発表では、2007年8月に発売された音声合成・デスクトップミュージック(DTM)ソフトウェア「初音ミク」のライブに注目し、その中で実際に何が行われているのかを明らかにしていく。特に今回は、実在しない初音ミクのライブに熱狂するオーディエンスの存在を中心に見ていく。

これまで、初音ミクに関する先行研究としては、音響技術的な観点や初音ミクのキャラクターそのものに注目したもの、ニコニコ動画と初音ミクの関係についてなどがあった。しかし、初音ミクの「ライブ」についてはあまり論じられていない。
そもそもライブパフォーマンスとは、物理的な場所でパフォーマーとオーディエンスが同時的に居合わせるものであった。しかし、ラジオやテレビ、インターネットといった新しいメディアが出現するたびに、ライブの意味は問い直される必要に迫られてきた。またテクノロジーの発展は音楽の複製を可能にしたが、それによってライブパフォーマンスは、録音された音楽を再現する場へと変わってしまった。そういった状況はあるものの、多くの人々は実際のライブパフォーマンスにライブの真正性を認識している。一方、サラ・ソーントンは、DJがレコードをプレイし、客がそれを聴きながら踊ったりアルコールを飲んだりする、クラブにおける音楽文化を「ディスク文化」と提示し、演奏者のパフォーマンスを中心とする従来の音楽文化を「ライブ文化」として対比させている。事前に歌や動きまでプログラミングされた初音ミクに、バンドの生演奏がついたライブは、ディスク文化とライブ文化の両方の要素を持ったものだと考えられる。そうしたライブを楽しむ人々が、そこでどのような経験をしているかを明らかにすることは、「ライブ」の意味を考え直す上で意義がある。

本発表では『初音ミク「マジカルミライ2013」』を事例に、オーディエンスがライブ中にどのような反応をしているのか、ライブの映像と発表者の実際の体験から見ていく。また、ブログやTwitterなどからオーディエンスの感想をいくつかピックアップし、彼らが初音ミクのライブに参加することについてどう捉えているのかを明らかにする。さらに本発表を通して、現代において「ライブ」がオーディエンスに対してどのように機能しているのかについても再考する。