音楽と場所〜京都から日本のポピュラー音楽文化の今を展望する

場所:友愛館3Fアゴラホール・14:00〜17:00

パネル:沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE。DJ/作曲家/執筆家/選曲評論家)
JOJO広重(非常階段。ノイズミュージシャン/アルケミーレコード主宰)
岡村詩野(音楽評論家)
増淵敏之(法政大学)
司会:安田昌弘(京都精華大学)


音楽文化におけるレコード会社やマスメディアの影響力が弱体化し、あるいはインターネットの普及による新しい――脱中心化した――音楽の媒介のあり方に注目が集まっているが、その一方で様々な規模のライブの活性化や都市型フェスの流行にみられるように、特定の「場所(そこに生活する人々の個別具体的主観が投影された、空間の一部)」に根ざした音楽活動の重要性は今までになく高まっている気がする。本シンポジウムでは、大会会場の位置する京都に注目し、

  1. そこで展開されてきたポピュラー音楽の歴史的固有性
  2. レーベル、放送局、ライブハウス、レコード屋など様々なリソースの地理的布置
  3. そのなかで音楽を奏で、ファンを動員し、シーンやムーブメントを作ってゆく実践

という3つのレイヤーを重層的に検討する。

欲望の音楽』『路地裏が文化をつくる!』などの著書で、独自の視点から都市と文化の関係を論じてきた増淵敏之は、都市における様々な音楽リソース(レーベルやレコード屋、ライブハウスやクラブ、テレビやラジオ、雑誌やファンジンのみならず、京都の場合「大学」の存在も大きい)の布置が、どのようにそこでのポピュラー音楽の生産・流通・消費をかたちづくってきたかを、具体的な事例を紹介しつつ俯瞰的に跡づける。

これを受け、JOJO広重は、70年代後半、自分が音楽活動を始めた頃の京都(あるいは関西)について語る。若者たちを取り巻いていたメディア(ラジオ、テレビ、雑誌…)や街(ジャズ喫茶、ロック喫茶、レコード屋、ライブハウス…)が、いかにして”非常階段”をはじめとするノイズやアヴァンギャルド、即興音楽のシーンを醸成していったのかを、当時の音源や映像も交えつつ、自ら経験した物語として振り返る。

KYOTO JAZZ MASSIVE、そして今年から始動したKYOTO JAZZ SEXTETで、世界的な活動をしながらも「KYOTO」という文字をつねに背負ってきた沖野修也は、90年代半ばからの自身の活動のなかで、KYOTOという「ブランド」がどういう意味を持ち、変遷してきたのかを語る。また、みずからも積極的に関わっている「クラブと風営法」問題を通し、音楽する「場所」を提供することの意味についても問題提起をおこなう。

最近、「京都インディ・シーンの今」という記事を音楽批評サイト『The Sign Magazine』に上梓した岡村詩野は、上のような議論を引き受けつつ、京都に蓄積されてきた音楽文化の記憶や痕跡が、今京都で音楽する人々にどのような作用を及ぼしているのかを探る。また、どうしても東京中心で動かざるを得なかった日本の音楽シーンについて、京都(あるいは関西)からなにが出来るのか、その可能性と克服すべき点について展望を述べる。

後半のディスカッションでは、フロアを交えて、そこから逆に、ポストフィジカルかつトランスローカルな日本のポピュラー音楽文化のあり方の「今」を見通してみたい。

《文責:安田昌弘》


JoJo広重

京都生まれ、京都育ち。
JOJO広重日本が世界に誇るノイズバンド”非常階段”のリーダー&ギタリストとして、1978年から音楽活動を続けている「キング・オブ・ノイズ」。ソロでは轟音ノイズと内省的な歌というコンセプトで唯一無比の音楽世界を構築。現在は日本国内のみならず、ソニック・ユースのサーストン・ムーアなど海外アーティストからも強烈なリスペクトを帯びている。多数の海外公演、坂田明などフリージャズの面々とのセッション、最近ではボーカロイドやアイドルグループなどとの幅広い合体ユニットなど、ノイズを最大限に活用した音楽活動は非常階段結成30年余を過ぎてもまだまだとどまることがない。JOJO広重ソロでは10枚組CDBOX、メジャーや海外からのアルバムリリースなど作品も数多く発売されている。

沖野修也

京都生まれ、京都育ち。
沖野修也DJ/作曲家/執筆家/選曲評論家/Tokyo Crossover-Jazz Festival発起人/The Roomプロデューサー。KYOTO JAZZ MASSIVE名義でリリースした「ECLIPSE」は、英国国営放送BBCラジオZUBBチャートで3週連続No.1の座を日本人として初めて射止めた。これまで世界35ヶ国140都市に招聘された国際派。著書に『DJ選曲術』や自伝『職業、DJ、25年』等がある。2014年秋にはバーニーズ・ニューヨーク新宿店で初のイラストレーション展を開催。2015年4月、新たにプロデュースしたプロジェクト、Kyoto Jazz Sextetのデビューアルバム『Mission』をブルーノート・レーベルよりリリース。8月には『RUNAWAY〜Boogie grooves produced and mixed by Shuya Okino』をリリース。iTunesダンス・アルバム・チャートにて第1位を獲得。現在、InterFM『JAZZ ain’t Jazz』にて番組ナビゲーターを担当中(毎週水曜日22時)。

岡村詩野

東京生まれ、京都育ち。
岡村詩野90年頃から音楽ライター/音楽評論家として活動。現在は『朝日新聞』『ミュージック・マガジン』『VOGUE NIPPON』『the sign magazine』などに執筆中の他、東京と京都で音楽ライター講座の講師も担当。2014年からは京都精華大学ポピュラーカルチャー学部にて非常勤講師も務めている。2015年4月からはFM京都(α-STATION)にて『Imaginary Line』(毎週日曜日21時~)の番組パーソナリティもスタートさせた。京都という土地の持つ音楽の現場としての可能性を追求し、中央(東京)との連携をとりつつも、東京でしか発信されていない現状に挑戦していきたいと考えている。

増渕敏之

札幌生まれ、札幌育ち。
増淵敏之法政大学大学院政策創造研究科教授。コンテンツツーリズム学会会長、文化経済学会〈日本〉理事、明治大学文学部史学地理学科卒業、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)、NTV映像センター、AIR-G’(FM北海道)、東芝EMI、ソニー・ミュージックエンタテインメントにおいて放送番組、音楽コンテンツの制作及び新人発掘等に従事、主な著作に「物語を旅するひとびと」(単著、2010、彩流社)、「欲望の音楽」(単著、2010、法政大学出版局)、「物語を旅するひとびとⅡ」(単著、2011、彩流社)、「路地裏が文化を作る!」(単著、2012、青弓社)、「物語を旅するひとびとⅢ-コンテンツツーリズムとしての文学巡り-」(単著、2014、彩流社)など。

安田昌弘

東京生まれ、千葉育ち。
安田昌弘京都精華大学ポピュラーカルチャー学部教授。東京都立大学(現首都大学東京)人文学部卒業後、渡英。英レスター大学マスコミ研究所(CMCR)でヒップホップ文化を軸にした日仏音楽産業の研究を行いPh.D.取得。欧州での経験を活かし、現在は関西、特に京都の音楽シーンについてフィールドワークやフランスにおける日本のポピュラーカルチャー受容の研究を行っている。訳書に『ポピュラー音楽理論入門』、『ポピュラー音楽をつくる』、共著に『ポピュラー音楽へのまなざし』、『The International Recording Industies』、『ポピュラー音楽から問う』、『音楽が終わる時』など。