The Japanese Association for the Study of Popular Music

2012年第1回関東地区例会

関東地区では、修士論文発表会を下記の通り開催します。

【関東地区例会 修士論文発表会】
日程:2012年3月25日(日)15:00-17:30
会場:法政大学大学院 政策創造研究科 新見附校舎 A501教室
アクセス:市ヶ谷駅または飯田橋駅より徒歩
地図:http://chiikizukuri.gr.jp/access.html

発表:
1)「ライナーノーツ研究」
発表者:高橋聡太(東京芸術大学大学院音楽研究科音楽文化学芸術環境創造領域修士課程)
時間帯:15:15~16:15
発表要旨:
 音盤に付された解説書であるライナーノーツは、レコードやCDとともに広く世に出回り、多くの人々に読まれている。とりわけ英米のロック・アルバムが日本盤としてリリースされる際に書きおろされるライナーノーツでは、一般的なレコード評とは異なる独自の批評文化が育まれてきた。
 しかし、ライナーノーツを重点的に取り上げた研究は過去に類を見ない。ライナーノーツはアルバムを聴く際にざっと読まれるものであり、その影響は意識されにくい。また、録音媒体/ジャンル/リリースされる地域/リリースされるタイミングといった要因によって規定されるライナーノーツの形式と内容は、アルバムごとに異なる相貌を見せるため、一概には捉えられない。
 こうした問題点を念頭に置いた上で、本研究ではロック日本盤のライナーノーツに対象を限定した文献調査を実施。曖昧な読まれ方ではなく書き手の確固たる意識に目を向け、決まった定義を与える代わりに時代ごとの変化を追うことによって、ライナーノーツに関する包括的な理解の構築を試みた。
 今回の発表では、修士論文全体の論旨をふまえた上で、過剰なまでの肯定性を特長とする今日的なロック日本盤ライナーノーツが、ライナーノーツ文化全体の中どのように位置づけられ、どのように生まれ、どのような歩みを辿ってきたのかを報告する。

2)「日本におけるネットレーベルの活動─音楽コンテンツの生産・流通とコミュニティの形成─」
発表者:日高良祐(東京芸術大学大学院音楽研究科音楽文化学芸術環境創造領域修士課程)
時間帯:16:30~17:30
発表要旨:
 本研究の目的は、ネットレーベルと呼ばれる活動とはどのような社会的実体であるのかを明確にし、そこでの音楽コンテンツの生産・流通がどのような意味を持った行為として捉えられているのかを明らかにすることである。ネットレーベルとは、インターネットを介してMP3ファイルを無料で生産・流通させている音楽レーベルのことを指す。2009年ごろから日本では数を増やしており、Twitterの利用によるユーザー間の活発なコミュニケーションが特徴として見られる。
 調査は日本のネットレーベルを対象とし、そこで行われているコミュニケーションに注目した考察を行った。調査方法としては、ネットレーベル主宰者へのインタビュー調査、クラブイベントでの参与観察、そしてウェブ上で展開されるコミュニケーションへの参加を実施した。
 まず、既存のレコードレーベルが音楽コンテンツを生産し流通させるためのシステムとネットレーベルとを比較し、そこから得られた2つの論点について考察した。すなわち、CGMの特徴であるコンテンツの流動性をネットレーベルがどのような歴史的経緯において獲得してきたのかという点、またネットレーベルの活動では具体的にどのようなコミュニケーションが行われているのかという点の2つである。これらへの考察から、ネットレーベルとはコミュニティとして機能しているということ、そして、そこで行われている音楽の生産と流通の行為は、ユーザーによるコミュニケーションの行為として機能していることが明らかになった。

問い合わせ先:安田昌弘(研究活動担当理事)
yasuda_at_kyoto-seika.ac.jp (_at_をアットマークに変えてご送信ください)