The Japanese Association for the Study of Popular Music

2020年度 第1回 関西地区例会

卒業論文・博士論文報告会を下記の通り開催いたします。

直前の告知で大変恐縮ですが、みなさまのご参加をお待ちしております。

 

日時:2020年2月29日(土)14:00~18:00

会場:関西大学 千里山キャンパス 第三学舎 C404教室

 

アクセス:

阪急電鉄千里線・関大前駅下車、階段を上がり関西大学「西門」からエスカレーターを上がる。真正面に見える建物が第三学舎です。

 

アクセスマップ:

http://www.kansai-u.ac.jp/global/guide/access_senri.html

キャンパスマップ:

http://www.kansai-u.ac.jp/global/guide/mapsenri.html

 

■発表1:

「愛国ソング」の受容態度と分断社会――RADWIMPS「HINOMARU」を事例に

平 寧々(関西大学社会学部社会学科メディア専攻4年)

 

【要旨】

2018年6月、RADWIMPSの「HINOMARU」という楽曲が賛否両論の議論を巻き起こした。RADWIMPSは、日本の有名なロックバンドである。タイトルの「HINOMARU」は、日本の国旗を意味している。人々は、この楽曲についてインターネット上で様々なコメントを寄せている。ある人は、国歌にしたいと賞賛した。また、ある人は、まるで軍歌のようだと批判した。そして、何人かの研究者は、この楽曲を愛国ソングであるとして考察している。しかし、このような先行研究からは明らかになっていないことがある。ひとつは、人々の意見が分かれる理由である。もうひとつは、この楽曲が、愛国ソングとして受容されない場合もあることである。したがって、本研究では、「愛国ソング」を受容する人々の態度がどのように分かれているのかを明らかにする。なお、括弧付きで表記した「愛国ソング」には、愛国ソングであるか疑問があるという意味も含まれている。

本研究では、ツイートの内容分析と、インタビュー調査を行った。その結果、「愛国ソング」を受容する人々の態度は、4つに分類できた。なぜそのように分かれるのかについて、近年、注目されている分断社会と関連づけて考察する。

 

■発表2:

「ブルデューの〈界〉の方法論と対応分析:現代日本のポピュラー音楽の構造分析を事例にして」

平石 貴士(立命館大学社会学研究科研究生)

 

【要旨】

1970~80年代に定式された、仏社会学者ピエール・ブルデューの場/界(champ)の概念は、分化なり、差異化なり、「島宇宙化」した現代の諸領域を指し示す概念として「都合が良く」、文化研究のなかでそれほど体系的でなく多用されてきた。南田勝也による場の概念を用いたロック・ミュージック研究などポピュラー音楽研究では先進的な研究があるものの、場の厳密な研究においてブルデュー用いてきた仏発祥の統計技術である「対応分析」という方法については文化研究におけるそのポテンシャルがこれまで検討されてこなかった。本論文ではこの方法を検討し、実際にオリコンのデータに基づいて2014年の日本ポピュラー音楽の場を分析を行った。またこの分析の経験をもとに、ブルデューの諸概念と方法の再検討を行った。その結果、文化研究に統計分析を用いる利点は、ハビトゥスや資本といった固有の社会学概念をデータに即して明確化することにあることがわかった。当日の報告では以上についての説明に加えて、音楽研究に応用する際の特殊な諸問題について提起したい。

 

■発表3:

「電気音響機器の歴史をひらく:1910年代~1920年代の米国を事例に」

福永健一(関西大学大学院社会学研究科マス・コミュニケーション学専攻博士後期課程)

 

【要旨】

発表者は、修士論文で1920年代米国のクルーナー歌手の流行について分析し、博士論文で1870年代から1930年代米国の電気音響メディアを介した様々な声の営みについて歴史社会学的に検討した。本発表では、博士論文で取り組んだ研究の一部である、米国におけるマイクロフォン、ラウドスピーカー、拡声器といった電気音響機器の登場と広がりについて紹介する。1910年代から20年代の米国で開発されたこれら機器の歴史記述は、ラジオ、電気録音、トーキー映画といった同時代に出現した電気音響メディアに比べて分厚いとはいえない。これらの機器がどういった文脈から開発され、どのような用途で用いられたのか、主に米国における企業の研究開発と市井への広がりに焦点を当てて検討する。電気音響技術が当時の音風景やポピュラー音楽に与えた影響などを考える一助となることを目指す。

 

 

例会終了後、懇親会を予定しています。

 

お問い合わせ([at]を@に変えてご送信ください)

柴台弘毅(関西例会担当研究活動委員) kouki.layra[at]gmail.com

輪島裕介(研究活動担当理事) yskwjm[at]gmail.com