The Japanese Association for the Study of Popular Music

2019年度 第1回 中部地区例会

2019年第1回中部地区研究例会を下記の通り開催いたします。
皆さまのご参加をお待ちしております。

 

日時: 2019年11月16日(土)13:30~17:30
会場: 愛知県立大学・県立芸術大学サテライトキャンパス
愛知県産業労働センター 15階
愛知県名古屋市中村区名駅 4丁目4-38(名古屋駅から徒歩2分)
http://www.winc-aichi.jp/access/

 

研究発表1:
ダンス必修化は何をもたらすか
――ストリート」と「学校」の狭間で生じるストリートダンスの諸問題――
有國明弘 (大阪市立大学大学院文学研究科後期博士課程)

 

ラップやストリートダンスといった、海外でいわゆる「対抗文化」として誕生した音楽やスポーツは、日本でも若者を中心としたサブカルチャーとして受容され、今日ではそれらを実践する若者を街中やメディアでもよく目にするようになった。2012年からは、ストリートダンスが中学校保健体育でのダンス必修化で学校教育に取り入れられ、授業や部活動、さらにはオリンピックの競技種目化も現実味を帯びてきた。こうした社会的・国際的な関心の高まりとともに、若者のライフスタイルにおいても大きな比重を占めるようになりつつあるサブカルチャーの社会的影響力は、ますます看過できなくなっている。
一方でそれらは、既存の教育社会学的研究では若者にとって消極的に機能するものとして描き出され、社会も彼らを「不良」のように扱ってきた。そのため教育カリキュラムではストリートダンスの本来の「対抗文化」的側面などが不可視化され、学校や社会が求める全く別のダンスへの変容が見受けられる。つまり、日本のストリートダンスは、実践者たち(ミクロ)のローカル実践と、行政組織(マクロ)主導のローカル化の二重のローカル化が同時に進行している、非常に動的な事象といえよう。したがって本報告では、日本のストリートダンスの両ローカル化実践の内実を比較検討することで、そこで生じうる社会的・文化的な諸問題をいくつか提示し、それらについて議論を深めたい。

 

研究発表2:
「キューバ音楽」としてのレゲトン・クバーノの変容
――ヘンテ・デ・ゾーナを例に
畑陽子(愛知県立芸術大学大学院音楽研究科博士後期課程)

 

レゲトンは、2000年以降ラテン系の若者たちを中心に支持、実践されているダンス音楽である。同時期に、レゲトンはキューバでも受容され、新たにレゲトン・クバーノというジャンルを形成した。反帝国主義的な精神のもと、外来の音楽に自国の文化の要素を折り混ぜ、それを自国の音楽として発展させる習慣のあったキューバにおいて、レゲトンもキューバの伝統音楽の要素を取り入れながら変容していく傾向にあった。本発表では、キューバ国内外で活躍するレゲトン・クバーノのグループであるヘンテ・デ・ゾーナに焦点を当てる。彼らの作風は、キューバ音楽の要素を取り入れながらも、2000年代後半のヨーロッパ市場への進出、2014年の米国市場への進出を受けて、段階的に変化している。本発表では、彼らの作品の楽器編成、リズム、楽曲の速さ、そしてそれに付随するダンスの動きに着目し、その変化を示すとともに、それぞれの変化の要因を考察する。

 

研究発表3:
踊るJ-POP?−ダンスと振付の間
輪島裕介 (大阪大学文学部・大学院文学研究科)

 

発表者は、2015年に『踊る昭和歌謡』という書物を刊行した。その目的は、「鑑賞」という受容のあり方と対照的な参与的活動としての「踊るための音楽」の系譜を近代日本において辿ることだった。そこでは「踊る」ことに関する厳密な定義を避け、「音に反応した身体的動作」と概略的に捉えていたに過ぎず、具体的に念頭にあったのは、基本的なステップや動作のイディオムを即興的に組み合わせて、しばしば男女(あるいはリーダー/フォロワー)ペアで踊るものだった。それに対して、現代日本の大衆音楽においては、「踊る」ことは、音楽受容においてきわめて重要な要素になっている一方、それは殆どの場合、「予め設定された振付を覚え、複数人で同期させて遂行すること」であるようにみえる。発表者が現在取り組んでいる1970年代以降の日本のディスコ文化においても、「自由に踊る」ことと「振付を揃える」ことの関係はしばしば重要な問題として浮上している。そこで、本発表では、「踊る」ことと「振付」の関係について、1970年代から現在までを視野に入れて考察してみたい。

 

懇親会:
例会終了後、「サルバドール」(栄町・ブラジル料理)で懇親会を行います。参加費用は3000円を予定しています(飲み物は別)。参加希望の方は11月13日までにポープ(メールアドレスは下記)にご連絡ください。

 

お問い合わせ(_a_をアットマークに変えてご送信ください):
エドガー・W・ポープ(研究活動委員・中部例会担当)
pope_a_for.aichi-pu.ac.jp