Japanese Association for Studying Popular Music

青木深会員のデヴィッド・ティーレン賞受賞

 青木深会員が『ポピュラー音楽研究』16号に発表した「エキゾティシズムを歌う――進駐軍ソングとしての「支那の夜」と「ジャパニーズ・ルンバ」をめぐる歴史人類学的研究」がアメリカ歴史家協会(Organization of American Historians)よりデヴィッド・ティーレン賞(David Thelen Award)を受けました。おめでとうございます。これは1985年から15年間、Journal of American Historyの編集者を務めた人物を記念し、1994年よりほぼ2年おきに「アメリカ史の視野を広げた独創的な業績」に与えられ、英語以外で書かれた論文が対象となります。「大半のアメリカ人読者がめったに出会うことのないアメリカ合衆国についての考え方・書き方」を提示したことが評価され、日本語論文の受賞は初めてです。審査員の言葉を要約すると、「アメリカ兵がどのように日本文化を体験し楽しみ、共有しようとしたのかを歌を通して語っているのが良い。感情の歴史家として、著者は異国趣味が植民者・占領者の道具であるに留まらず、もっと人間的なレベルで楽しみを与え、文化を越えた出会いを実現することを示した」。副賞の一部として、対象論文が上の学会誌に翻訳されます。

 青木会員の論考は『めぐりあうものたちの群像―戦後日本の米軍基地と音楽1945-1958』(大月書店、2013)の延長で、駐屯中のGIがいわゆる「進駐軍ソング」のなかでも戦前の「支那の夜」、戦後の「ジャパニーズ・ルンバ」を特に愛したことをどう説明するか、ということから論を展開します。それは異国情緒の喚起というばかりでなく、日本女性を誘う際のきっかけとして利用し、自ら歌う楽しみも見出したことを多数のインタビューと録音・出版記事から掘り起こしました。同書が2013年度サントリー学芸賞を受賞したのに続いて、派生論文がアメリカで評価されたのは大変嬉しい。めったにないダブル受賞ではないでしょうか。イタリア、ドイツ、韓国など米軍基地が戦後の音楽文化の隠れた拠点となった国は他にもあります。そこにもこのような特別な意味を持たされたお気に入りの歌があったのかどうか、興味が広がります。

日本ポピュラー音楽学会会長 細川周平