The Japanese Association for the Study of Popular Music

 

2011年第4回関西地区例会

関西地区で、研究例会を下記のとおり開催します。

 

日時: 10月15日(土曜)16時開場〜19時終了
会場: 関西学院大学 大阪梅田キャンパス 10階 1002号室
(大阪市北区茶屋町19-19 アプローズタワー10階 受付TEL: 06-6485-5611)
アクセス: 阪急「梅田駅」 茶屋町口改札口より 北へ徒歩5分。
JR「大阪駅」御堂筋出口から徒歩10分、地下鉄御堂筋線「梅田駅」から徒歩7分、「中津駅」から徒歩4分。
地図: http://www.kwansei.ac.jp/kg_hub/access/index.html

 

発表1: 「鉄腕アトムの効果音がもたらしたもの」
発表者: 宮田昌典 (京都市立芸術大学大学院音楽研究科博士課程)
要旨:
日本最初期のTVアニメ『鉄腕アトム』における効果音は、キャラクターに独特の存在感を与えている。本発表では、『鉄腕アトム』の物語世界に対する効果音の位置づけを分析し、それが虚構上のリアリティといかに関わっているのかを考察する。

 

発表2: 「ウガンダ、カンパラの音楽エンターテイメントを発展させる若者たち:学校と社会、娯楽とビジネス、個人と集団のはざまで」
発表者: 大門碧 (京都大学・学術振興会特別研究員)

要旨:

東アフリカの内陸に位置するウガンダの首都カンパラでは、10数年前から「カリオキ」と呼ばれる音楽エンターテイメントが盛んにおこなわれている。欧米やジャマイカ、隣国ケニア、タンザニア、そしてウガンダのミュージシャンたちの楽曲を使用し、その歌にあわせてさまざまなパフォーマンスを見せるのは、当地の10代から20代の若者たちが結成する10人程度のグループである。本発表では、2007年から2011年にかけておこなってきた、「カリオキ」を実践する若者たちへのインタビューと参与観察をもとに、「カリオキ」が発達してきたプロセスを明らかにする。
 調査の結果、「カリオキ」という文化は、若者たちが学校から社会へと向かっていくちょうど分岐点として位置していると考えられた。そこでは若者たちは「カリオキ」をビジネスとして成功させることをいつも気にしながらも、同時に娯楽としておこなっていることを否定できない。そして各パフォーマーという個人の存在と、所属するグループである集団を確固たるものとして執着しない様子は、現代アフリカの若者たちの特徴のひとつとしてとりあげることができるだろう。

 

研究会終了後には懇親会も予定しています。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

 

問い合わせ先:安田昌弘(研究活動担当理事)
yasuda@kyoto-seika.ac.jp


2011年第2回関東地区例会

関東地区では、下記の通り研究例会を開催します。

 

日時:2011年9月10日(土)14:00〜17:00
会場:亜細亜大学2号館236教室
アクセス:JR中央線武蔵境駅北口から徒歩12分、または北口からムーバス「境西循環」「境・東小金井線」に乗り「亜細亜大学南門」下車
地図:http://www.asia-u.ac.jp/access/map.html

 

タイトル:「ポスト・パッケージ時代の音楽活動 ―― ネットレーベル現象から考える」


・谷口文和(企画+司会・亜細亜大学短期大学部)
 趣旨説明:音楽産業の過渡期という観点から
・日高良祐(東京芸術大学大学院)
 ネットレーベルを軸としたコミュニティ意識の形成
・今井晋(東京大学大学院)
 ミュージシャンのコミュニケーション:ネット以前と以後
・樺島榮一郎(相模女子大学)
 各報告へのコメント:コンテンツ産業論の立場から
・トークセッション

 

企画趣旨
 音楽の流通メディアの中心がCDからインターネットや携帯電話へと移行しつつある現在、「ネットレーベル」と呼ばれる音楽配信のスタイルが注目を集めている。国内外のネットレーベルからはテクノなど電子音楽の作品が次々と発表されており、レーベル内やレーベル間での音楽家の交流も活発に行われている。しかし、レコード会社というかたちをとらない彼らが何故「レーベル」という呼称にこだわるのか。この「レーベル」という語に込められた意味を読み解くには、大手レコード会社のあり方を半ば基準としてきた音楽産業の理解の枠組とは別の視点が必要となるのではないだろうか。
 そこで今回は、音楽家の新たな活動基盤、キャリア形成手段という観点からネットレーベルを取り上げ、そこに形成されるネットワークや価値観、ひいてはそれらを通じて見えてくる音楽産業の成立条件について議論したい。

 

研究会終了後には懇親会も予定しています。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

 

問い合わせ先:安田昌弘(研究活動担当理事)
yasuda@kyoto-seika.ac.jp

 

2011年第3回関西地区例会

関西地区で、研究例会を下記のとおり開催します。(7/7追記:時間と会場が変更になりました。ご注意ください。)

 

日時: 7月9日(土曜)16時30分開場〜19時30分終了
会場: 関西学院大学 大阪梅田キャンパス 14階 1406号室
(大阪市北区茶屋町19-19 アプローズタワー14階<受付、TEL06-6485-5611>)
アクセス: 阪急「梅田駅」 茶屋町口改札口より 北へ徒歩5分。
JR「大阪駅」御堂筋出口から徒歩10分、地下鉄御堂筋線「梅田駅」から徒歩7分、「中津駅」から徒歩4分。
地図: http://www.kwansei.ac.jp/kg_hub/access/index.html

 

発表1: 「現代の若者のケータイ・コミュニケーション―自己と他者をつなぐ着信メロディー」
発表者: 石井裕子氏 (関西大学大学院社会学研究科マス・コミュニケーション学専攻修士課程修了)
要旨:
本研究は、現代若者の人間関係やコミュニケーションに注目する。とりわけ携帯電話の着信音を使って自己と知人をどのように結びつけているのか、明らかにすることを目的とする。携帯電話のメモリー内で、テーマごとに分類されたグループに着信音を設定する行為(グループ着信音)、特定の個人に着信音を設定する行為(指定着信音)について、焦点をあてる。

 

発表2: 「ジャマイカのダンスホール音楽にみる「バッドマン」の抵抗と信仰心」
発表者: 二宮健一氏 (神戸大学大学院国際文化学研究科博士後期課程)
要旨:
ジャマイカのダンスホール音楽で表象される典型的な男性イメージ「バッドマニズム」は、貧困層の若者による体制への抵抗表現として解釈されてきた。本発表では、「バッドマン」を体現する歌い手がこの国のイデオロギー装置ともいえる教会との間にとり持つ関係を手掛かりとし、「バッドマニズム」の社会的意義を再考する。

 

研究会終了後には懇親会も予定しています。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

 

問い合わせ先:安田昌弘(研究活動担当理事)
yasuda@kyoto-seika.ac.jp

 

2011年第2回関西地区例会

関西地区で、研究例会を下記のとおり開催します。

 

輪島裕介氏著『創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』 書評会
日時: 6月18日(土曜)16時開場〜19時終了
会場: 関西学院大学 大阪梅田キャンパス 14階 1402号室
(大阪市北区茶屋町19-19 アプローズタワー14階<受付、TEL06-6485-5611>)
アクセス: 阪急「梅田駅」 茶屋町口改札口より 北へ徒歩5分。
JR「大阪駅」御堂筋出口から徒歩10分、地下鉄御堂筋線「梅田駅」から徒歩7分、「中津駅」から徒歩4分。
地図: http://www.kwansei.ac.jp/kg_hub/access/index.html

 

著者の輪島裕介氏(大阪大学)ご本人をお迎えしたうえで、細川周平氏(国際日本文化研究センター)と長風纔N氏(京都大学大学院博士後期課程・学術振興会特別研究員)のお二人が評者を務めてくださいます。研究会終了後には懇親会も予定しています。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

 

問い合わせ先:安田昌弘(研究活動担当理事)
yasuda@kyoto-seika.ac.jp

 

2011年第1回関東地区例会

震災の影響で延期となっていた関東地区修士論文発表会の開催日が決定しました。
関東地区では、修士論文発表会を下記の通り開催します。

日時:2011年6月4日(土)13:30−
会場:東京芸術大学 北千住キャンパス 音楽学部音楽環境創造科 第一講義室
地図:http://www.geidai.ac.jp/access/senju.html

 

発表:
1)「消費者生成型メディアと国内コンテンツ産業の関係性の変容」
発表者:武居健太 (東京工科大学メディア学部)
時間帯:13:30-14:15
発表要旨:
 今日、我々は自宅に居ながら映画を見ることや音楽を聴くこと、仮想テーマパークに友達と参加するなどといったことが可能になった。これはコンピュータやネットワークなどの技術革新のほかに、コンテンツ提供者による多々のサービス展開があってこそ成り立つものである。なかでもコンテンツの利用を許諾しているコンテンツ・ホルダーの意向は状況を大きく左右する。なぜなら現在の著作権法ではコンテンツは著作者や著作者の所属するコンテンツ・ホルダーによって利用許諾が設定され、コンテンツの使用のよりコンテンツ・ ホルダーは収益を得ているからである。ラジオ放送が開始された昭和初期ではアメリカのレコード産業は一時的に大きな打撃を被り、日本ではラジオが流行歌のサンプル配布者の役割を果たした(生明、2004)。その後ラジオやテレビなどのメディアとコンテンツ・ホルダーは著作権使用における包括契約の締結や、コンテンツのメディア露出が常例となり協力関係を維持してきた。
 以上を踏まえるとインターネットの発達によって誕生した消費者生成型メディア(Consumer Generated Media、以下CGM)とコンテンツ・ホルダーも従来メディアのように協力関係を築くものだと予測される。しかしCGMはユーザーがコンテンツを発信するという従来メディアとは大きく異なる特徴を持つ。ユーザー発信によるコンテンツは、コンテンツ・ホルダーが制御可能な情報量を大きく超えるということだ。このような状況の中で本研究ではCGMとコンテンツ・ホルダーとの関係性の変遷を定性的、定量的に検証していく。
 国内国外共に最も普及しているCGMはYouTubeであり、2009年3月では国内ユーザー数が1907万人と言われている(ネットレイティングス2009年調べ)。YouTubeに付随する権利問題はサービス開始当初から沙汰されてきた。しかし現在では各権利者が思慮することはあっても、ニュース記事など話題になることは減少した。CGMの先駆者であるファイル共有ソフトのNapstarと比べると、10年前とは明らかに異なる結果となっている。本研究においてこの二者の違いにも言及し、CGMの認識を変容させた要因を示すことで、コンテンツ業界の動向を考察する。

 

2)「デジタルシフトが生む映像コンテンツの新しい消費態様と評価指標〜バリューチェーンのデジタル化がアニメにもたらす影響から」
発表者:松本淳(東京大学大学院)
時間帯:14:15-15:00
発表要旨:
「ジャパニメーション」が喧伝されるようになって久しい。映像のみならず、脚本、音楽、声優による演出、キャラクター商品など、アニメーションはコンテンツ産業の様々な要素を内包して成長してきた。報道等で取り上げられるように海外での人気も根強いものがあり、国も様々な振興策・育成政策を実施してきた。
だが、2005年のブームから一転、制作される作品本数は減少傾向にある。本論文では、アニメビジネスとコンテンツの現状を整理した上で、「メディアの転換(メディアシフト)」がそこにもたらす様々な変化を考察する。他のエンターテインメント産業にも共通する諸課題が抽出されるはずである。
複数のクリエイティブ著作物の複合体とも言えるアニメが、様々なメディアを介してその制作費用を回収していく仕組み(製作委員会方式)を改めて確認する。そこではコンテンツを展開するウィンドウの選択と、コンテンツへのグッドウィルを活用することがその鍵となる。
2000年代には盤石に見えたこれらのスキームだが、大きな変化に晒されている。その変化の態様と「ニコニコ動画」をはじめとするネット映像視聴サイトの実像を幾つかの側面から明らかにしていきたい。
本論文ではコンテンツ側の変化も確認した。アナログからデジタル、デジタルからネットという変化は伝送手段のみならず制作手法から消費の在り方まで影響を及ぼしていく。結果として経営的な観点からはバリューチェーンを大きく組み替えていく必要に迫られている点についても触れる。
論文後半ではウィンドウウィングモデルの再定義を提案する。物理的メディアを介してウィンドウ設計と販売モデルを組み上げてきた従来の手法は限界を迎えているという観点から、コンテンツ提供者がどのようにウィンドウ展開を組み上げればよいのか事例を交えながら解決の方向性の提示を試みた。

 

3)「日本におけるDubstep―音楽シーンに関する考察―」
発表者:アルニ クリスチャンソン(東京芸術大学大学院)
時間帯:15:15-16:00
発表要旨:
 本論の目的は音楽シーンの考察であり、特にダブステップとして知られるダンス・ミュージックのジャンルがいかに日本においてローカル化していったのかを検討する。ダブステップのクラブ・イベントの参与観察を通じて民族誌的なフィールドワークを行い、ダブステップのアーティストやDJへのインタヴューや、音楽雑誌の調査を実施した。
 1990年代初頭に始まったクラブ・カルチャーについての研究は、パンク・ミュージックに着目したバーミンガム学派のサブカルチャー研究が基礎となっている。日本のダブステップを分析する上では、「シーン」を定義したウィル・ストローの研究と、ファビアン・ホルトによる「ジャンル」の定義を論拠とする。
 インターネットを通じた草の根的なムーブメントとして世界中に広まっているダブステップは、グローバル化している文化の興味深い事例である。2004年に初めて日本に輸入されたが、メジャーなメディアには認知されていなかった。2007年頃からローカルなシーンが成長し始め、東京や大阪でパーティが開催されるようになり、そこから様々なイベントやアーティストたちが派生し、全国各地さまざまな地域に出現するようになった。
 日本におけるクラブ・ミュージックのジャンルにおけるローカル化についての先行研究は非常に少なく、そのほとんどは日本にヒップホップが進出した際の足跡をたどったものであるのだが、ここではそれとは異なったローカル化の過程について論じる。
 本論で述べた考察を通じて、ローカル化された音楽シーンについて着目する際の2つの異なった方法を提示したい。1つ目は、音楽的活動の文化的な領域として、そして2つ目は、文化化が完結した「ローカル・ジャンル」としてである。日本でのダブステップ実践を説明するための言葉としては、「ローカル・ジャンル」よりもむしろ「シーン」がふさわしいとものだと言えるだろう。

 

4)「失われゆく音楽文化の多様性・多言語性を求めて―― グローバル化時代の地歌箏曲伝承のフィールドワークから ――」
発表者:佐藤岳晶(東京芸術大学大学院)
時間帯:16:00-16:45
発表要旨:
 グローバル化に伴う西洋音楽の世界的浸透・ヘゲモニーの拡大ならびに、その音楽への同化等による、世界の音楽文化の単元化・単一言語化と、それに伴うマイナー音楽文化の危機への問題意識から、音楽文化の「多様性」について再考する。
 当省察においては特に、異なる音楽言語間の「差異」について注視し、多様な音楽言語の併存による「多言語性」の相において、音楽の多様性を思考する。カルチュラル・スタディーズの理念・方法論に基づく学際性ならびに実践との節合を旨とするアプローチにより、研究・探究は、「グローバリゼーション」や「ポストコロニアリズム」といった社会・歴史・思想概念や(社会)言語学等とも分節化され、また、フィールドでの実技研鑽や演奏活動への参加、ならびに作品創作といった実践とも有機的に結びつけられてきた。
 多言語性を基とする音楽世界観を求め、音楽にまつわる「普遍性」の批判的再考と西洋音楽を相対化させる視座の獲得、ならびに、音楽文化・音楽言語間の「差異」を実証すべく、幼少より西洋音楽を学んできた筆者は、西洋音楽とは異なる音楽のあり方を今に伝え続ける、重要無形文化財保持者の二代 米川文子師の主宰する、生田流・地歌箏曲の一会派「双調会」において、音楽修行を兼ねたフィールドワークを行ってきた。
 言語学の分析概念を援用しつつ、「双調会」伝承の地歌箏曲と西洋音楽の間の通約不可能な音楽言語上の「差異」を明らかにすると同時に、このような「差異」の拡がりの中にこそ、人間の音への認識・音楽の営みの多様性の意義深さがあると提起するとともに、その多様性・多言語性の維持・発展の希求において、「双調会」をはじめとする非西洋音楽文化の今後、「差異」を資源とする創造の可能性等へと検討を拡げて行く。

 

5)「『社会としての学校』におけるメンバーシップ〜インタビューと参与観察に見るカテゴリーの使用を題材に〜」
発表者:團康晃(東京大学大学院)
時間帯:17:00-17:45
発表要旨:
本研究は、学校を幾重にも折り重なる相互的な意味構成の結節点として、つまり「社会」として描き出すというものである。これまでP.ウィリスの『ハマータウンの野郎ども』をはじめとするサブカルチャー研究や日本における生徒文化研究は、学校という場に見出される文化とグループ、文化的差異の在り様を明らかにしようとしてきた。しかしながら学校と文化をめぐる諸研究は、二つの困難を抱えていたといえる。一つには、80年代後半以降学校という場が研究対象として背景化していったことであり、もう一つには、多くの研究が「学校という社会」ではなく「学校を通して社会」を記述しようとしてしまうが故に、学校という社会において、相互行為を通して達成されるメンバーシップ、つまり成員たちが織り成す文化的な差異を記述できないということだった。
そこで本研究ではこれまでの文化とグループをめぐる諸研究の問題意識を受け継ぎながら、エスノメソドロジー・成員カテゴリー化装置のアイデアを手がかりに、これまでの課題であった学校という社会の中でのメンバーシップの達成、言いかえると相互行為における様々なカテゴリーの使用とその使用によるせめぎあう文化的差異の達成を経験的に記述することを目指した。
本研究における音楽(や音楽に関する知識)もまた、ある文化的カテゴリーと結びついたものとして、誰かを説明したり、メンバーシップの確認を行なう際にみられるものだった。
報告では、校内放送での選曲に関するエピソードを題材に、選曲において「オタク」であることを問題化させないための工夫と、その問題化の場面についてみていく予定です。

 

6)「コンピュータ音楽に媒介された相互作用とライヴ」
発表者:原島大輔(東京大学大学院)
時間帯:17:45-18:30
発表要旨:
本論文は、一般的にしばしばそのライヴ性の欠如が指摘されるコンピュータ音楽のパフォーマンスについての考察を通じて、現代的な諸技術環境におけるライヴ性の条件を提示する。ソフトウェアによってその機能を柔軟に変形しデジタルな再生産やシミュレーションを得意とするコンピュータが個人的な所有物となり、しかもそれらが他のコンピュータや他の諸技術とネットワークされている、現代の技術的なメディア(すなわち環境の複数形)において、われわれはそのような諸環境と相互に補完しあうようにして成立している。そのような諸環境において実行される音楽的パフォーマンスに関してライヴとメディアの二項対立を設けることは、たとえそれがメディアに対するライヴの卓越を喧伝しようとするものであれ、メディアによる汚染からライヴの純潔を保護しようとするものであれ、かえってそのことによってライヴを固定し時代遅れなものにするか、特定の時代や文化や社会における偶然的な構築物に還元することになるだろう。ライヴとメディアは対立関係にあるのではなく、また特定の技術の使用がライヴと非ライヴとを区別する基準になるわけでもない。ライヴ性とは、対象の客観的な特性ではなく、そこに参与するわれわれによってある程度構成されるものであり、したがってある程度相対的なものである。しかしそう断言することでわれわれが主張しようとしていることは、あらゆるメディア経験がライヴ的であるとか、ライヴ性は全く相対的であるといったことではない。問題は相対的な構成を制約する機構であり、それこそがメディア化されたパフォーマンスのライヴ性についてのより普遍的な基準となりうる。先行するパフォーマンス研究におけるライヴ論を踏まえ、その問題点や不満を乗り越えるための補助線としてオートポイエーシス論に代表されるネオサイバネティクス諸論を参照しながら、本論文はライヴ性を定義付ける。すなわち、われわれがわれわれの埋め込まれた諸環境を或る種の生命的なものとして構成せずにはいられなくなるような、われわれとメディアとの特異な相互作用のあり方を特定する。

 

※時間帯は目安ですので、前後する可能性があります。余裕をもってお越しください。

 

問い合わせ先:安田昌弘(研究活動担当理事)
yasuda@kyoto-seika.ac.jp

 

 

2011年中部地区特別例会

きたる4月24日(日)、中部地区特別例会を開催いたします。今回は、日本アメリカ文学会中部支部との合同開催として、日本アメリカ文学会第28回支部大会において、以下にご案内の通りシンポジウム「ポピュラー音楽を通して<読む>複数のアメリカ」をおこないます。また、当日は引き続き佐藤良明氏による特別講演「Thomas Pynchon とポピュラー音楽」がおこなわれます。ともに参加は無料、予約は不要です。ふるってご参加ください。

 

日本アメリカ文学会 第28回中部支部大会

日時:4月24日(日)10:15〜 (合同開催シンポジウムは13:55〜)

会場:愛知淑徳大学星ヶ丘キャンパス5号館5階55A教室
464-8671 愛知県名古屋市千種区星が丘23
TEL 052-781-1151 (代)
地下鉄東山線星ヶ丘駅下車 3番出口から徒歩約3分
交通アクセス・マップ:
http://www.aasa.ac.jp/guidance/map.html

参加無料、予約不要 (午前中に行われる、日本アメリカ文学会中部地区大会の個人研究発表にも無料で参加できます。受付にて「日本ポピュラー音楽学会から来た」旨お伝えください)

 

【プログラム】

開会のことば 会長 鵜殿えりか (愛知県立大学) 10:15〜10:20

研究発表
(1) 高橋 綾子 (長岡科学技術大) 10:20〜11:05
  「ジョアン・カイガーの『タペストリーと織物』」
(2) 駒田 法子 (日本福祉大学 非常勤) 11:10〜11:55
  「Maxine Hong Kingston のThe Woman Warrior: Memoirs of a Girlhood Among Ghosts
における視点と「黒いカーテン」のイメージ―戦争、狂気から帰郷の物語へ 」

 

シンポジウム (JASPM中部地区特別例会との合同開催) 13:55〜15:55
「ポピュラー音楽を通して<読む>複数のアメリカ」
司会・講師 久野陽一 (愛知教育大学)
講師    長澤唯史 (椙山女学園大学)
講師    エドガー・ポープ (愛知県立大学)
講師    南田勝也 (武蔵大学)

 

特別講演「Thomas Pynchon とポピュラー音楽」16:15〜17:15
講師 佐藤良明
司会 長畑昭利 (名古屋大学)

プログラムの詳細と概要については、以下のURLのリンクをご覧ください。
http://www.lang.nagoya-u.ac.jp/~nagahata/amlitchubu/taikai11.html

 

 

2011年第1回関東例会

 

3月11日追記:地震に伴う状況の見通しが立たないため、延期とさせていただきます。

開催日程については、追ってメールニュース等でお知らせいたします。

 

5月5日追記:第1回関東例会は6月4日に開催されることになりました。

 

関東地区では、修士論文発表会を下記の通り開催します。

 

日時:2011年3月13日(日)13:30−
会場:東京芸術大学 北千住キャンパス 音楽学部音楽環境創造科 第一講義室
地図:http://www.geidai.ac.jp/access/senju.html

 

2011年第1回関西例会

関西地区で、研究例会を下記のとおり開催します。

 

日時:1月29日(土)14時〜17時
会場:桃山学院大学 大阪本町オフィス セミナー室A
〒541-0052 大阪市中央区安土町3-3-9 田村駒ビル3F
(地下鉄御堂筋線 本町駅 1号出口を東へ50M)
地図:http://www.andrew.ac.jp/work/hommachi.php

 

福屋利信著『ビートルズ都市論:リヴァプール、ハンブルグ、ロンドン、東京』書評会
評者:小川博司(関西大学)、山口晋(目白大学)

 

「音楽は、それが発生する背後にある経済及び歴史・文化から決定的な影響を受ける。
ビートルズとて例外ではない。文化不毛の労働者の町であり、奴隷貿易の暗い歴史を持
つリヴァプールで生まれたビートルズは、プライドを粉々にされる惨めな修業時代をド
イツのハンブルグで過ごし、階級社会ゆえの露骨な蔑視と偏見をぶつけてくるロンドン
への反抗心を活力に成功への階段を上っていった。その軌跡の上で、都市は彼らとその
周辺をどう変えたのか。読めば全く新しいビートルズが聴こえる」(「BOOK」データ
ベースより)。

山口大学でアメリカ文学を研究しておられる福屋利信(ふくや・としのぶ)氏をお招き
し、『ビートルズ都市論』の書評会を開きます。著者の福屋氏は、ビートルズを題材に
した英語のリーディング授業や、ラジオ局でパーソナリティーを担当する等、地元では
ユニークな活動で知られている方です。本書は、人物像や音楽性に着目することが多い
従来のビートルズ本とは異なり、都市を主人公にしているところに特徴があります。す
なわち、リヴァプール、ハンブルク、ロンドン、東京という4つの都市の歴史や背景が
、ビートルズにどういう影響を及ぼしていったのかを読み解く内容です。

当日は、社会学、地理学の立場から本書へのコメントをいただき、著者を交えて、ビー
トルズと都市について、あるいは、ポピュラー音楽を生み出す環境要因について、豊か
な議論を交わすことができればと考えています。終了後は、懇親会を予定しています。
多くの方の参加を心よりお待ちしております。

 

問い合わせ先:安田昌弘(研究活動担当理事)
yasuda@kyoto-seika.ac.jp
_____________

2010年第1回中部例会 (終了)

 日時:2010年10月30日(土)14:00−
 場所:名古屋大学大学院国際開発研究科8階第2会議室
 (東山キャンパスマップの45番の建物です)
  http://www.nagoya-u.ac.jp/global-info/access-map/higashiyama/

 

 発表:
 1. 「漫画におけるThe Doorsの受容と風刺」   発表者:社河内友里(名古屋大学院)

 

  発表要旨:
 本発表では、Jane Jenkins Oliver著のアメリカの漫画、Tales of Jerry(1978〜1992)に描かれているThe Doorsのイメージから、1960年代に大きく評価されたThe Doorsが、後の世代のポピュラーカルチャーにおいてどのように受容されているのかを考察する。
 Tales of Jerryは、アメリカのアンダーグラウンド・コミックス出版社の一つであるKarma Komix Productionsから出版された、The Doorsをモチーフとした風刺漫画である。主人公のMr. Mojo Ryzinは、The DoorsのボーカリストであるJim MorrisonがJerryという吸血鬼に吸血されたことにより誕生したJim Morrisonの吸血鬼である。Mr. Mojo RyzinがThe Doorsの楽曲を吸血鬼風に実演したり、Jim Morrisonの伝説的な行動を吸血気風に行う様子が描かれている本作品からは、The Doorsへの風刺が見られる。
 1960年代を代表するアメリカのロック・バンド、The Doorsの楽曲やパフォーマンスからは、1950年代からビート作家を始めとする若者たちが示してきた、精神的な超越状態を追求する姿勢が見られる。しかし、Tales of Jerryにおいては、そのような真剣な芸術的追及の姿勢は風刺され、嘲笑されている。また、吸血鬼になったMorrisonが金儲けに固執する描写からは、コンシューマリズムに対する肯定的な傾向を読み取ることもできる。本発表では、Tales of Jerryにおける風刺から、The Doorsがその後のポピュラーカルチャーにおいてどのように受容されているのかということを明らかにする。

 

 2.「ウルグアイ・モンテビデオにおけるカーニバル音楽のポピュラー音楽への取り入れ」  発表者:西村秀人(名古屋大学)

  

  発表要旨:
 南米ウルグアイの首都モンテビデオでは、毎年特徴あるカーニバルが行われており、その花形はアフリカ系のカンドンベのパレードと、ヨーロッパの伝統を汲む舞台芸能ムルガである。カーニバルにおけるその2つの伝統の変遷と、その音楽のポピュラー音楽への取り入れについて、現地調査の成果をまじえて論じる。


問い合わせ先:佐藤良明(研究活動担当理事)
sgtsugar@mac.com

 

 

2010年第2回関東例会(特別研究例会)(終了)

 

 関東地区で、特別研究例会を下記のとおり開催します。多数のご参加をお待ちします。

 日時:9月18日(土)13:00〜15:00
 場所:東京藝術大学北千住キャンパス 音楽学部音楽環境創造科第一講義室
  〒120-0034 東京都足立区千住1-25-1 (北千住駅下車徒歩5分)

 地図:http://www.geidai.ac.jp/access/senju.html

 

「〈洋楽〉の日本市場への導入から〈邦楽〉の海外展開まで」
お話=田中章氏(元ソニー・ミュージック海外マーケッティング担当)
 企画+導入=加藤綾子(東京大学大学院)
 司会=佐藤良明

 

ソニー・ミュージックエンタテインメントで国際的なマーケティングに長年従事され、最近退職された田中章氏をお迎えし、ポピュラー音楽が産業として今より輝いていたように感じられる時代に、それがビジネスとして、いかなる努力に支えられていたのか、分け入ってお話しをうかがいます。
 田中章(たなか・あきら)氏は、1973年から96年まで、CBS・ソニー、EPIC・ソニーの両レーベルで海外渉外部門のヘッドとして活躍。海外人気アーティスト(Michael Jackson、WHAM!、Cyndi Lawper、Julio Iglesias、Paul Yong 等)の日本での浸透に尽力されました。
 1996年から2010年までは、SME(ソニー・ミュージックエンタテインメント)の香港オフィス所長を勤めた機関を含め、アジアと欧米での日本のアーティスト(パフィー、ラルク アン シエル、HYDE、ケイコ・リー、五輪真弓、中川翔子、ゴスペラーズ、中孝介ほか多数)の売り出す仕事を手がけられました。
 当日は音楽産業研究を専門のフィールドにしている加藤綾子さんの舵取りにより、アカデミックなまなざしのもと、興味深いお話しを繰り広げていただきます。
 活発な話題提供と議論の交換、あたらしい仲間づくりの場になれば楽しいだろうと期待し、多くのかたの参加をお待ちします。15時以降、二次会に流れるかもしれません。

 

お問い合わせ
JASPM 研究活動理事 
佐藤良明  sgtsugar@mac.com

 

 

■2010年第1回関西例会(終了)
 
 JASPM関西例会では例年、その年に提出された修士論文を対象にした発表会を催し、集まった会員で活発な質疑応答を
行っています。本年度の発表会の日程は下記の通りです。
 
  日時:4月24日(土)14:00〜
  場所:関西大学 心斎橋オフィス
  
  地下鉄御堂筋線「心斎橋」駅下車、南西へ徒歩3分
  地図:http://www.kansai-u.ac.jp/global/guide/access.html

 

 1)「学校教育現場・マスメディア融合型スタンダード・ミュージックの誕生──《翼をください》の事例から」

   報告者:柴台弘毅(関西大学大学院修士課程)
 
<論文概要>
 本研究は、日本のポピュラー音楽がいかにして特定の世代だけでなく幅広い世代に歌い聴き継がれ共有される「スタンダード・ミュージック」となるのか、また「スタンダード・ミュージック」が生み出される「場」はどこかという問いを、「翼をください」という特殊な経歴を持つ楽曲の事例研究を通じて考察したものである。
 本研究ではまず、小泉恭子による「ポピュラー音楽の使い分けの三層構造」を、音楽の他者との共有という視点、そして時間軸的な概念を用いて、ここでの目的のために再定義している。本研究では「スタンダード・ミュージック」を、大衆によって何世代にも渡り歌い継がれることで、特定の世代における共有を超え、異世代間で共有される通時性を獲得した楽曲として捉える。それはまた、長い年月を経て受け継がれてきたことで、楽曲の持っていた発表当初の背景を脱し、オリジナルの歌唱アーティストから解き放たれた、脱分脈化された楽曲であるともいえる。
 「翼をください」とは、赤い鳥というフォークソング・グループが1970年に初披露し、翌1971年にレコードとして発売された日本のポピュラー音楽である。この楽曲が「スタンダード・ミュージック」となるプロセスにおいては、文科省検定中学校音楽教科書に掲載され続けてきたこと、すなわち、マスメディアにおいて歌い聴き継がれてきただけではなく、学校教育現場で歌い聴き継がれてきたことが重要な意味を持つと考えられる。
 しかしなぜ、ポピュラー音楽である「翼をください」が、1970年代当時に学校教育現場へ進出することができたのか。このことを本研究では、株式会社教育芸術社、取締役兼編集部門担当の橋本祥路におこなった面接調査から明らかにする。橋本は「翼をください」の、ひいてはポピュラー音楽の学校教育現場への進出にもっとも影響を与えた人物の一人と考えられる。本研究では「翼をください」が学校教育現場への進出を果たした1970年代当時の学校教育現場とポピュラー音楽との関係、ならびに教科書検定の制度について言及している。
 また本研究では、「翼をください」を「学校教育現場・マスメディア融合型」の「スタンダード・ミュージック」として捉え、その生成プロセスを一般化すると共に、ポピュラー音楽が歌い聴き継がれる場所としての、学校教育現場の持つ可能性についても検討している。現在の学校教育現場におけるポピュラー音楽の扱いは、「翼をください」が学校教育現場へ進出した1970年代当時に比べて好意的であり、学校教育現場への進出を意図したポピュラー音楽が増加傾向にあることについても、今回の報告では言及したい。
 
 2)「韓国におけるポピュラー音楽の規制に対する抵抗――東方神起の事務所を事例として」
  報告者:李承美(関西大学大学院博士課程)
 
<論文概要>
 韓国におけるポピュラー音楽についての規制は、1995年に事前審議制度が廃止され、緩和されてきた。しかし、事前審議はなくなったとはいえ、青少年を有害な環境から守るという青少年保護法が1997年制定され、保険福祉部傘下の青少年委員会によりポピュラー音楽に関する事後審議がされてきた。青少年委員会は青少年有害媒体物に指定した曲の多くに対して、その理由として歌詞が煽情性である、暴力を助長する、否定的な認識を与えるなどの理由を挙げた。その他、放送で流れるパフォーマンスやライブでのパフォーマンスが煽情的であることで青少年有害媒体物に指定されることが多かった。そうした青少年有害媒体物の指定に対して、その基準の妥当性をめぐる議論がなされてきた。
 そうした中、2008年11月東方神起の「MIROTIC」という曲が青少年有害媒体物に指定された。その指定に対し、韓国の大手芸能エンターテイメントであるSMは保険福祉部長官(大臣)を相手に青少年有害媒体物処理取消訴訟を起こし、2009年4月1日に勝訴した。それは、アイドルグループの所属事務所が政府機関に対して勝訴し、指定が無効にされたという韓国における初めての事例であった。
 本件はその東方神起の件を事例とし、なぜ、SMという韓国初アーティスト事務所による国家機関の審議に対する訴訟が起きたのか、またなぜ勝訴したのかという点について焦点を当てる。分析としては、青少年保護法、青少年委員会を取り上げ、青少年有害媒体物になった曲を探る。そうした中で、前述の東方神起の事例における、裁判の経緯、判決文、世論など分析うることを通じて、その勝訴の意味を探る。すなわち、そのことは単に政治的な問題ではなく、ファンの支持、マス・メディアの支持、音楽産業の台頭ということが要因であることを確認する。

 

2010年第1回関東例会(終了)

 

 修士論文発表会

 

 日時:3月8日(月)14:00〜

 場所:東京藝術大学北千住キャンパス 音楽学部音楽環境創造科第一講義室
  〒120-0034 東京都足立区千住1-25-1 (北千住駅下車徒歩5分)


 地図:http://www.geidai.ac.jp/access/senju.html

 

 1)午後2時より
  「戦後日本のジャズ受容──雑誌『スイング・ジャーナル』からの言説分析」 

  

  報告者:日景千秋(東京芸術大学大学院音楽研究科)

 

 <論文概要>

 この論文は戦後、特に1950年代の日本のジャズ受容を雑誌『スイング・ジャーナル』(1947−1969)から分析するものである。
 『スイング・ジャーナル』は1947年に創刊され、当時国内唯一のジャズ専門誌として、アメリカのジャズや文化情報を提供し、コンサートを主催し

た。また雑誌に寄稿する批評家たちはテレビやラジオなどのメディアと密接な関わりを持ち、当時のジャズファンを啓蒙した。
 50年代は、ジャズを風俗として楽しむ人々と「リアル・ジャズ」としてビバップを追求しする2つのタイプがあった。大学でジャズ講座が開かれ、学生はジャズ・サークルを結成し、コンサートを開き、風俗・流行音楽としてジャズを楽しんだ。一方で一部のミュージシャンは流行に背を向け、「リアル・ジャズ」としてビバップに取り組み、日本におけるモダン・ジャズを確立した。
 52年、53年にはJ.A.T.Pやルイ・アームストロング・オールスターズが来日し、ジャズ・ブームが起こった。それに伴い日本人ミュージシャンのコンサートも多く催されたが、次第に商業化し中身のないものになっていった。このような状況で「中身のないコンサートや、ブームに乗じて練習を怠るようなミュージシャンの演奏ならば聴かなくてよく、これからはレコードやジャズ喫茶で本当のジャズを勉強するべきだ」といった声が批評家や熱心なジャズファンの間であがる。この傾向は後にレコード主義や教養主義、オーディオ狂につながっていった。
 50年代末より「日本人のジャズ」を作ろうとする動きが出てくる。高柳昌行、日野皓正、菊地雅章、山下洋輔らミュージシャンが研究会を開き、1960年代半ばに誕生した「ピット・イン」「タロー」のようなライブハウスに出演した。この時期は模倣から脱出し、「日本人のジャズ」を作り出そうとしただけではなく、ライブや日本人ミュージシャンの価値が見直された時期でもある。
 これらの議論を通して、この論文では戦後日本においてジャズがどのように広まったのか、ジャズ喫茶に見られるようなレコード主義や教養主義が生まれた背景を明らかにする。

 

 2)午後3時ころより
  「ポップミュージックと国家──ポップミュージックは国家のソフトパワーと成り得るのか」
 

  報告者:竹内知司(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科)

 

  <論文概要>
 1990年代以降、自国のポップミュージックを政府が保護・育成するための文化政策が、ヨーロッパやカナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどで活発に行われるようになった。更に2000年代以降では、ソフトパワー論が盛んになると共に、自国のポップミュージックを他国へ輸出するための助成策を取り入れる文化政策も増えてきた。しかし、ここで一つの疑問が生まれる。果たしてポップミュージックは国を代表する文化形態と呼べるのだろうか、ということである。なぜなら、現在世界中の国々で聴かれているポップミュージックのほとんどは、アメリカとイギリスで生まれた音楽をそのまま受容したものであり、それぞれの地方文化の要素ははっきりと見られないものである。果たしてJ-POPやスウェーデンのへヴィーメタル・ミュージックやドイツのテクノミュージックは、それぞれの国の音楽文化と呼ぶことは出来るのだろうか?あるいはフランス人ミュージシャンが英語で歌った音楽は、フランス音楽と呼べるのであろうか?もしその答えは「否」であるとするなら、ポップミュージックを自国文化の一つとして、保護・育成・輸出する文化政策の意義が問われることになる。
 本論文は、日本人も含めた様々な国から来た30人の学生とのインタビューを通して、ポップミュージックに如何にナショナルアイデンティティーとナショナルイメージが反映されているかを調べ、ポップミュージックとナショナルの関係性を考察したものである。
 そこで浮かび上がったのは、自国民が自国のポップミュージックに見出す「我々らしさ」(=ナショナルアイデンティティー)と、他国民がその国のポップミュージックから受け取る「彼ららしさ」(=ナショナルイメージ)の間には、ズレが生じていることである。それがポップミュージックの文化政策の有効性を論議することへの難しさとなっているが、それを克服した視点を獲得すれば、より有効なポップミュージックの文化政策を作り出すことが出来るのである。

 

3)午後4時ころより
 「場所の経験としてのツーリズムに関する研究──若い世代の音楽フェスティバルでの体験を事例として」


 報告者:山崎翔(北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院観光創造専攻)

 

 <論文概要>

 戦後の急速な近代化は、日本の場所を大きく変貌させた。その背 景にはメディアの発達があり、交通メディアは場所間の移動を容易にし、広告メディアは渋谷などの虚構的な場所を創造した。その場所の変化に対応し、大衆はマスツーリズムと呼ばれる、近代的な場所との関わり方を習得していった。自らは場所から遊離した状態で、場所を知覚する「車窓」などはその典型であり、それは、鉄道を基軸にした郊外における場所との関わりとも地続きであった。

 本研究では、このような近代的な場所との関わり方が、現代における均質的な場所への志向、及び、他者とのコミュニケーションの問題と関係していると考え、これまでとは違う新たな場所と人の関わり方を提示した。 

 その事例として取り上げたのが、ポピュラー音楽を通したツーリズム経験である。渋谷が虚構的な場所となっていった頃、1981年に新潟県の苗場で松任谷由実のリゾートコンサート「SURF&SNOW」がスタートする。それは、ユーミンが、歴史的な場所としての苗場を、自らの虚構的なサウンドスケープで塗り替えた瞬間であった。時を同じくして、リゾートブームが苗場を襲い、マンションが乱立、場所は資本化されていった。こうしてユーミンとリゾートは場所を変貌させ、聴衆もまた場所を消費する術を習得し、日常の消費社会へ戻っていった。
 しかし、1997年にスタートした音楽イベント「フジロックフェスティバル」が、99年に苗場へ場所を移し開催されると、場所と人の関わりが少しずつ変化し始めた。フェス参加者は一体どのように場所を知覚しているのか。本研究では参加者へのインタビューを基に現象学的視座から、新たな場所と人の関わりを提示した。

 

 ※なお発表 2)、3)の開始時間はおよその目安ですので、それぞれが目当てでいらっしゃる方は余裕をみてお越しください。

 

問い合わせ先:佐藤良明(研究活動担当理事)
sgtsugar@mac.com

 

 

 

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