The Japanese Association for the Study of Popular Music

2016年の研究活動記録

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【大会等】

日本ポピュラー音楽学会第28回大会

2016年12月3日~4日 立教大学(池袋キャンパス)

NEWSLETTER111号に報告を掲載

 

【関東地区】

◆第1回研究例会

日時:3月19日(土)13:00-18:00

会場:立教大学 池袋キャンパス 5号館5402教室

NEWSLETTER108号に報告を掲載

 

1. 「「SoundCloud」における音楽受容を通してみるコンテンツの断片化」

北村心平(武蔵大学社会学部メディア社会学科4年)

 

音楽SNSの出現や、DTMの発達によって自己表現が容易となり、楽曲制作者と聴衆の音楽を取り巻く環境は大きく変化している。

音楽SNSとは、ユーザーが製作した音源をそのSNS上に投稿して、リスナーに音源を聴いてもらうことができるシステムである。今回扱うSoundCloudは、システムの手軽さ、スピード感、音源の視覚化によってネットを介する双方向コミュニケーションによって人々の音楽受容をより断片的なものにした。

インターネットの流動性によって私たちは情報の選別を迫られるようになった。そのための効率化がこのSoundCloudにおける断片消費に現れている。

 

 

2. 「クリエイター奨励プログラム登場による動画コンテンツの変化と展望」

泊晋(立教大学社会学部現代文化学科4年)

 

2011年12月、ニコニコ動画は創作活動支援や二次創作文化の推進を目的として「クリエイター奨励プログラム」を開始した。クリエイターが積極的に動画サイトに作品を投稿した結果、動画サイトとそこでヒットする動画はその性質を変化させていった。本研究ではクリエイター奨励プログラム稼働前後のニコニコ動画の流行、またそれが引き金となって生まれた諸問題に触れると共に、新たに実用化されつつあるニコニコ動画上のコンテンツビジネスについて検証する。

 

 

3. 「洋楽ロックを聴く若者の聴取意識」

木村翔太(武蔵大学社会学部メディア社会学科4年)

 

あなたには、洋楽を聴く人々がどのように見えているだろうか。昨今『洋楽離れ』という言葉に象徴されるように、日本の音楽産業の中では英米ポップスの苦戦が色濃く存在している。よって洋楽を聴く若者というものはマイノリティになりつつあるわけだが、彼らはなぜあえて洋楽作品に愛着を持つのだろうか。本研究ではインタビューデータを基に、この命題を『作品文化の社会学』より≪趣向≫≪人的交流≫≪正統性≫≪偶像性≫それぞれをキーワードにして論じる。そして文化作品が私たちに与える様々な心的機制について考えていきたい。

 

 

4. 「サウンドトラックからみる音楽の受容と記憶」

川本歩(武蔵大学社会学部メディア社会学科4年)

 

人が音楽を受容した際に受ける感覚は、楽曲そのものの音楽要因に起因すると考えられてきた。つまりテンポや音調、旋律や演奏(アーティキュレーション)などである。しかし実際は人は音楽を聴くとき様々な「状況」に置かれている。それにも関わらず、音楽の好みの分析においてその「状況」に触れられることはほとんど無かった。本研究ではこの「状況」、つまり音楽受容の際の「記憶」に焦点を置き、サウンドトラックを好んで聴取する人へインタビューを行い個人的記憶を掘り下げることで音楽受容と記憶の関係性を調査した。 またインタビューの内容からサウンドトラックの聴取のされ方を5つの類型に分け、それぞれの受容のされ方と記憶の関連を考察する。

 

 

5. 「クラブという空間を巡って―アニソンクラブイベントの現在―」

浅野裕貴(東京芸術大学大学院音楽研究科音楽文化学専攻芸術環境創造領域修士課程2年)

 

本研究は、アニソンクラブイベントにおける諸実践を分析し、空間や集団性に焦点を当てることで今日の音楽文化の特徴的な一側面を考察する。 DJがアニメソングを流すアニソンクラブイベントでは、”クラブイベント”と称しているにも関わらずクラブでみられる空間とはかけ離れている。では、アニソンクラブイベントが形成する空間は一体何なのだろうか。フィールドワークやインタビュー調査を通じて明らかにする。また、「界隈」に着目することで、アニソンクラブイベントの特徴的な集団性を記述する。

 

 

◆第2回研究例会

日時:9月17日(土)14:00-18:00
会場:立教大学池袋キャンパス 14号館D402号室

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書評会

『マス・メディア時代のポピュラー音楽を読み解く:流行現象からの脱却』

登壇者

著者・東谷護(成城大学)

評者・大山昌彦(東京工科大学)、久野陽一(青山学院大学)、瀧戸彩花(立教大学大学院生)

 

混沌とした現代の音楽現象に着眼し、今日の日本社会の抱える問題を明示した『マス・メディア時代のポピュラー音楽を読み解く:流行現象からの脱却』(勁草書房,2016)をご執筆なされた東谷護氏をお迎えし、書評セッションを開催いたします。

多角的な視点からポピュラー音楽の捉え方を検証し、現代のポピュラー音楽の研究に際する様々なアプローチを提示した本書は、作曲技術の変化、録音技術の発展、デジタル媒体の進化、これらに伴う作り手と受け手の諸相と、その複雑さを提示しています。本書を読み解くことは、「マルチ・メディア時代」の音楽を語るにあたり必要不可欠な地域性や文化的背景等を始めとした、様々な文脈を考慮したポピュラー音楽の考察方法の検討をより深め、本書では語りきれなかった現代のポピュラー音楽と社会的問題の実態を明示する一助になるのではないでしょうか。

登壇者は、著者の東谷護氏、評者として、大山昌彦氏、久野陽一氏、瀧戸彩花が登壇します。
書籍情報は以下のURLをご参照ください。

http://www.keisoshobo.co.jp/book/b215010.html

 

 

【関西地区】

◆第1回研究例会

日時:2016326日(土)17:00~19:30

会場:関西大学 千里山キャンパス 3学舎 C404教室

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博士論文、博士論文構想報告会

「社会を媒介する音楽―「出来事」の生成理論をめざして」(博士論文)

吹上裕樹(関西学院大学大学院社会学研究科研究員)

 

本報告では、「音楽的媒介」の視点に基づきつつ、「音楽の社会性とは何か」という音楽社会学の基礎的な課題をあらためて検討する。「音楽的媒介」の視点とは、音楽を可能にする人々の行為や事物の働きと、そうした行為や働きを可能にする音楽自身の働きの両者に照準し、それらの同時的生成を考えるものである。ここでは、こうした視点の音楽社会学(ないし文化社会学)にとっての意義とその課題についても議論したい。

 

 

「ウェブにおける音楽と賑わい―1990年代~2000年代初頭の日本の事例を中心に」(博士論文構想)

岡田正樹(大阪市立大学大学院)

日本でのインターネット黎明期から普及期にあたる1990年代から2000年代前半の時期を中心として、不特定多数のユーザーが集う音楽実践の場としてインターネットを捉える構想や試みの内実を詳らかにするとともに、それらの構想や使用を通して、インターネット上にいかなる形で賑わいが生み出されたか(生み出されなかったか)を明らかにする。

 

◆第2回研究例会

日時:2016年8月30日(火)14:00-17:00
会場:関西大学 千里山キャンパス 第3学舎教室A305教室

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書評会:トマス・トゥリノ

『ミュージック・アズ・ソーシャルライフ―歌い踊ることをめぐる政治』

登壇者
訳者:野澤豊一(富山大学人文学部准教授)
評者:谷口文和(京都精華大学ポピュラーカルチャー学部専任講師)
:秋山良都(大阪大学大学院文学研究科博士課程)
司会:輪島裕介(大阪大学大学院文学研究科准教授)
進行:太田健二(四天王寺大学人文社会学部准教授)

歌い踊ることは社交だ!―「参与型音楽」「上演型音楽」「ハイファイ型音楽」「スタジオアート型音楽」という枠組みによって、民族音楽、ポピュラー音楽、アート音楽のすべてを一つの土俵のうえで論じる、これからの音楽社会学のスタンダード本『ミュージック・アズ・ソーシャルライフ――歌い踊ることをめぐる政治』の書評会を行ないます。
本書訳者の野澤豊一氏に加え、評者として、『音響メディア史』『音楽未来形』などの著者谷口文和氏、ドイツの教会ブラスバンドのフィールドワークを行っている秋山良都氏、そして司会として、『創られた「日本の心」神話』『踊る昭和歌謡』などの著者輪島裕介氏が登壇します。
皆さまのご参加をお待ちしております。

◆第3回研究例会

日時:10月22日(土)14:00-17:00
場所:関西大学千里山キャンパス第3学舎1号館3階 A305教室

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「日中におけるKPOPファンの比較―ローカル化されるグローバル文化」

黄慧(関西大学大学院社会学研究科)

 

KPOPの日本のファンと中国のファンは、異なった意識をもち異なった行動をとる。そのようなファンの意識・行動の相違はなぜ生じるのか。本研究では、ファン文化がそれぞれの国の規制の中で、音楽産業とファンとの間のせめぎ合いの中で形成されていることを、フィールドワークにもとづいて明らかにする。グローバルに展開される文化がいかにローカライズされるかの研究である。

 

 

「中国におけるインディー・ロックシーンの形成―ライブハウス、ソーシャルメディアの役割を中心に」

余沛沛(関西大学大学院社会学研究科)

 

中国では、1990年代以降、インディー・ロックのシーンが形成されるようになった。本研究では、中国におけるインディー・ロック・シーンが、ローカル・シーン、トランスローカル・シーン、ヴァーチャル・シーン(Bennett &Peterson)それぞれの段階において、どのように形成されてきたかを、ライブハウス、ソーシャルメディアの役割に着目しながら、主に関係者のインタビューにより明らかにする。

 

 

◆第4回研究例会(特別例会)

日時:12月17日(土)14:30~17:00
場所:大阪市立大学杉本キャンパス 田中記念館2F会議室

(日本音楽学会西日本支部 第35回(通算386回)例会と合同例会)

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1.「レコードの考古学—フォノグラフ、あるいは「音を書くこと」の含意について」

秋吉康晴(京都精華大学)

 

フォノグラフ、グラフォフォン、グラモフォン――これら黎明期の録音技術はいずれも「音を書く」という意味をもつことが知られている。古くからある書字の限界を超えて、音そのものを書き取ること。それこそが蓄音機に与えられた役割だったのである。
では、そのような新しい書字の技術としての蓄音機は、どのようにして誕生したのだろうか。キットラー以来、その由来は多くの場合、フォノトグラフのような音響記録の技術に求められてきた。ところが、エジソンがフォノグラフを発明した経緯を調査すると、彼はもともと音の記録というよりも合成をおこなおうとしていたということが分かってきた。つまり、エジソンは音響として再生されうるパターンを物体に刻むことで、言語音を自在に生成することを目論んでいたようなのである。本発表ではそうした蓄音機の由来に着目することで、「音を書くこと」が記録を超えた含意をもっていたことを明らかにしたい。

 

 

2.「音楽を通して考える老後生活 ―カラオケ喫茶・教室における日常的実践―」

ベニー・トン(オーストラリア国立大学大学院、大阪大学招聘研究員)

 

音楽を通して考える老後生活 ―カラオケ喫茶・教室における日常的実践―
日本のポピュラー音楽の人類学的な研究では、若者たちが集う音楽の現場とジャンルに関する調査が殆どである。しかし、高齢化社会である日本では、多くの年配者もポピュラー音楽に深く関わっており、その音楽行動は彼らの日常生活の不可欠な一部である。発表者は、ポピュラー音楽研究における高齢者文化の空白を埋めるため、年配の参加者が多いカラオケ喫茶と教室に注目する。東京と大阪での参与観察調査と聞き取り調査を通じて、高齢者がいかにカラオケの場で音楽と関わるかを調べてきた。本研究では、イアン・コンドリーの「ゲンバ」の概念とサイモン・フリスやティア・デノラが強調する音楽の感情的および身体的な側面についての議論を参考にし、カラオケ喫茶と教室における日常的な音楽実践を通じて、高齢者の生活における身体性、社会性と心性について検討する。さらに、そこで歌われる演歌や歌謡曲というジャンルのありかたについても考察する。

 

【中部地区】

◆第1回研究例会

日時: 2016年10月23日(日)15:00~17:30
会場: 愛知県立大学・県立芸術大学サテライトキャンパス
愛知県産業労働センター 15階

「米国黒人ペンテコステ派教会における“音楽”」

野澤豊一(富山大学人文学部)

 

米国黒人教会の音楽文化は、20世紀大衆音楽の形成に大きな影響を及ぼした一方で、今日にいたるまでその独自性を保っている。それは、ブラック・ゴスペルという「ジャンル」が同時代性を失わずに進化を続けていることだけを指すのではない。牧師が伴奏者の力を借りつつ説教をクライマックスにいたらせる手法、継ぎ目なく導入される音楽が礼拝儀礼をミュージカルのように進行させる様子、信者の感情を高ぶらせたり会衆の一体感をつくりだしたりするのに強力な(呪術的ともいいうる)パワーを発揮する音楽――これらの音楽の利用法が、私たちのもつ近代的な「音楽」という概念を揺さぶるのである。

発表者は、これまでのべ2年間にわたって、ミズーリ州セントルイス市の黒人ペンテコステ派教会を中心に、文化人類学的なフィールドワークを行ってきた。本発表では、現地で撮影した映像を交えながら、黒人教会の“音楽”のあり方がどのようなものかを考えたい。

 

 

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