Japanese Association for Studying Popular Music

2015年度 第3回 関西地区例会(特別例会)開催のお知らせ

(日本音楽学会西日本支部第28回(通算379回)例会と合同例会)

 

日本音楽学会と合同で特別例会を開催します。みなさまのご参加をお待ちしています。

 

日時:10月3日(土)15:00〜17:30
場所:京都精華大学ポピュラーカルチャー学部 友愛館Y-005
 

 1.(研究発表)白石知雄「大栗裕の採譜の実際 – 「大栗文庫」所蔵資料の2015年度再調査報告を中心に」
 

発表者は、船場島之内出身の作曲家、大栗裕(1918-1982)の自筆譜等を集約した大阪音楽大学付属図書館大栗文庫の移転(移転先は近日発表予定)に先立ち、準備作業として本年4月から所蔵資料を再調査する機会を得た。この発表では、新たに発見された管弦楽のための組曲「雲水讃」(昭和36(1961)年文部省芸術祭参加作品)の草稿(京都吉祥院六斎念仏の録音を採譜した楽譜帳)の概要を紹介し、没後「大阪のバルトーク」と喧伝されることすらあったこの作曲家の民俗的な素材の取り扱いの実態と、その意義を批判的に考察する。
「雲水讃」(初演稿全3楽章の第1、3楽章、改訂稿全2楽章の第2楽章)は、吉祥院天満宮大祭(毎年8月25日)の芸能を、おそらく委嘱元である朝日放送の協力を得てオープンリールテープに収録して、その音源を採譜した素材にもとづいて作曲されている。発表者の調査では、大栗裕がバルトークに擬せられる発端、遠因はこの作品であった可能性が高い。
しかし各種資料を照合すると、録音の取り扱いにはいくつかの不備が認められる。
日本の伝統芸能に立脚した創作を主張する武智鉄二(1955年の歌劇「赤い陣羽織」の演出家)の感化、1956年の「大阪俗謡による幻想曲」の成功を受けた続編的な新作への期待、ラテン音楽(ニューリズム)の流行に煽られて「和製サンバ」と評された京都の六斎念仏への注目度など、このような作品が書かれねばならない外的条件が整い、いわば外堀が埋められた状況で、作曲者は半ば意識的、半ば無意識的に課題をやり過ごし、身を翻したように見える。
 新技術(テープ録音)が投入された晴れがましい企画を曖昧に切り抜ける態度は、作品の欠陥、当事者の能力不足を疑わざるを得ないが、難局に直面した売れっ子ならでは図太さ、しぶとさが、創作を次の段階へ推し進める。本作以後、大栗裕に自ら取材・録音した音源を用いた作例はない。発表者はこの作品を、失敗することに成功した作曲者の転回点と位置づける。

 

 2.(話題提供)安田昌弘「音楽と場所」

 

 特定の場所と結びつけて語られる音楽は多いが、その結びつき方は一様ではない。ある場合にはそれは、音楽的要素によって説明されるが(例えば特定の音色や音階、韻律が特定の場所と結び付けられる)、他の場合では社会的/文化的背景によって説明される(そこでは音楽は、特定の時代・場所における政治的・経済的・文化的状況の表現とされる)。このようにして考えると、音楽と場所を結びつける根拠は一貫性を欠き、場合によっては恣意的にさえみえる。それにもかかわらず、我々は音楽と場所を結びつけることをやめようとしない。それはなぜか? 本発表では、主にデヴィッド・ハーヴェイの空間分類とその間の相互介入という議論を参照し、音楽と場所の結びつきについて改めて検討する。

 なお、12月に京都精華大で開催される日本ポピュラー音楽学会全国大会では、京都という具体的な場所を対象とし、「音楽と場所」について多面的に検討するシンポジウムを開催する。本報告はその予告として位置付けられる。

 

※例会終了後、京都精華大学ポピュラーカルチャー学部の録音スタジオ「Magi Sound Studio」の見学会を行います。

 

お問い合わせ([at]を@に変えてご送信ください)
 太田健二(関西例会担当研究活動委員) otakenji[at]shitennoji.ac.jp
 粟谷佳司(研究活動担当理事) awatani[at]gmail.com